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Chronos日本版

【スペックテスト】 モーリス・ラクロア ポントス クロノグラフ

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MAURICE LACROIX
PONTOS CHRONOGRAPHE

アッパー・ミドルクラスの成長。

文:ヴィトルト・A・ミヒャルツィク/写真:ロベルト・ラライア 金沢文春/翻訳:市川章子

昨年、モーリス・ラクロアのミドルクラスライン、ポントスに先鋭的なクロノグラフモデルが加わった。考え抜かれたスタイリッシュなプッシュボタンは、従来の典型的なボタンとの違いを明確に主張する、ミドルクラスウォッチのイメージアップにひと役買うことが出来るのだろうか。

○と×

・仕上げ加工のレベルが非常に高い

・デザインがスタイリッシュ

・価格に無理がない

×

・針の位置によってはインダイアルが見づらい

・精度が今ひとつ冴えない


クロノス評価:

・ストラップとバックル(最高10ポイント) 8pt.

・操作性(5) 4pt.

・ケース(10) 9pt.

・デザイン(15) 12pt.

・視認性(5) 4pt.

・装着性(10) 9pt.

・ムーブメント(20) 12pt.

・精度安定性(10) 7pt.

・コストパフォーマンス(15) 13pt.

合計78pt.


070730mau1.jpgベースキャリバーのバルジュー7750がうまく組み込まれたCal.ML112。精度はもっと引き上げることが可能なはずだ。

実用時計としての視認性が必要不可欠

 クロノグラフを作り上げるというのは楽な仕事ではない。文字盤のあの小さな面積に、通常の時刻表示の邪魔にならないように時間計測の表示を入れ、かつ視認性をキープしなくてはならないのだ。日常の中でひと区切りの時間を計るシーンはいくらでもあるだろうが、実際にクロノグラフを作動させる状況とはどんなときだろうか。


 例えば電車の遅延や、夕刻のクルマの渋滞で帰宅までにどれだけ余計に時間がかかるのかチェックしよう、といった具合だろうか。ともあれ結局、クロノグラフはスポーツをする人にとってはもちろん、日常生活においても、やはり実用時計であることは否めない。だからこそ、視認性のウエイトは大きい。


 デザインを決めるとき、延々と動き続けるスモールセコンドを削ったとしても、今日の主流として積算計はふたつは必要だ。さらに日付表示も加えたりすると、文字盤の上は大混雑である。そのうえプッシュボタンを操作しやすく、かつ邪魔にならないようにふたつも設置しなくてはならない。

クロノグラフの着用シーンが広がるクールな印象

 モーリス・ラクロアは昨年、人気のポントス・ラインに3つの新作を加えている。その中のひとつが、今回のテストに取り上げたスモールセコンド付きのクロノグラフだ。ポントス クロノグラフと名づけられたこのモデルは、ノーブルで実用的な仕上がり。すっきりと整頓されたデザインは、クロノグラフの着用シーンが広がるようなクールな印象を与える。


 まず目に入るのは直径を大きく取った文字盤だ。そのフィールド内には各ポジションが非常に明確に割り振られている。スモールセコンドはその名のごとくまさしくスモール。他のインダイアルより明らかに小さく設計されている。だが、クロノグラフにとって、通常の秒の機能はムーブメントが息をしているかどうかの目安のようなもの。なので、ポントス クロノグラフのインダイアルのエリア分けは、それぞれが過不足のないように配慮されている。


 しかし、クロノグラフの作動を何度か試していると、気になることがあった。銀色に渋く光るインダイアルの針がかなりフラットに近い加工のためか、光の加減によっては文字盤の黒い地になじんでしまい、浮き上がって見えなくなるのだ。この短所はすべてのインダイアルに共通している。何よりも困惑してしまうのは、クロノグラフの作動にストップをかけたときだ。真正面から強い光を受けた状態だと、針はほとんど判別できなくなってしまう。


070730mau2.jpgプッシュボタンとリュウズガードのコンビネーションで、使いやすく機能的なスイッチ。“実用”はクロノグラフに必要な要素である。

これまでのポントス・モデルと一線を画すデザイン

 針以外のメタルパーツに関しては、アップライトのインデックスとリングの加工に統一感を持たせているところなどは好感が持てる。インダイアルを区分するメタルリングに目を近づけると、実にきめ細やかな加工であることが分かる。インデックスは面取りされ、インダイアルのリング同様に、光を集めておだやかな輝きを放つところが美しい。ふたつの積算計の面積はスモールセコンドとは逆にかなり大きく取っていて、力強く主張している。


 しかも3時位置に空きのあるアシンメトリーな配置にもかかわらず、調和の取れた落ち着きが感じられる。これは日付表示が3時位置ではなく6時位置に置かれているため、視線が自ずと縦軸中心に集まりやすくなるからであろう。台形に切り取られた日付の小窓とあまり見かけないアンティーク調の字体は、硬くまとまりがちな全体のデザインにちょっとした崩しを与えるアクセントになっていて、これまでのポントス・モデルと一線を画している。

4.リューズガードの機能を持ったクロノグラフスイッチ

 さて、このモデルは大きな積算ダイアルが目を引くが、その価値はやはり計測するときにものをいう。クロノグラフは外観に釣り合うインパクトを操作機能にも持たせるために、設計の問題をクリアしなくてはならない。ベースキャリバーに手を加えても、ふたつのプッシュボタンの存在を生かすとなると、その形と位置が重要になる。なおかつ高い操作頻度にも耐え得るものでなくてはならない。ポントスは、リュウズガードと融合したスイッチ型プッシュボタンで諸々の問題をクリアした。


 モーリス・ラクロアはこのモデルで機能性とスタイリッシュさのコンビネーションに成功している。このデザインスタイルは、今後のポントス・ラインの中核となるだろう。なだらかな隆起のスイッチはリュウズ寄りの部分がしっかりとビス留めされていて、リュウズガードとしての役割も果たしている。この形状なら、突き出た形状のプッシュボタンと違って、手の甲への当たりもソフト。そして服の袖口にもトラブルが起きづらい。クロノグラフの操作は上下のスイッチともリュウズから離れた端の部分を押して行う。スイッチは幅広で、押し心地は滑らか。操作は非常に快適だ。

表も裏も「生真面目さ」がにじみ出る

 モーリス・ラクロアの腕時計はケースの仕上げ加工のレベルが高いことが特徴のひとつだが、このモデルでも技術の良さが冴えている。エッジはすっきりとして、贅肉を削ぎ落としたボディに光が当たってキラリと輝くと、鏡面仕上げの研磨が生真面目なほど丁寧なのが分かる。ケースを裏返すと、幅広のリング状の部分には短いバー状の装飾が入り、アクセントが付いている。


 ケースはさまざまな要素がきっちり組み合わさった、バランスの良い出来だ。しかしこれだけの仕上がりでありながら、裏蓋がスナッチバックになっているのには首をかしげざるを得ない。今どきの設計ならばスクリューバック、もしくはビス留めのスタイルが自然であろう。おそらくこれは、ケースサイドから裏蓋へと続くおだやかなカーブを最大限に生かすために取られた選択なのではないだろうか。

バルジュー7750ベースのキャリバーML112

 ハイレベルな美しさの外観には、やはりそれなりのキャリバーが必要だ。今回の精度チェックはウルムの時計宝飾品店ケルナーにご協力いただいた。ベースキャリバーにバルジュー7750を使用したキャリバーML112の精度データは検査器での平均日差が通常時で+8秒、クロノグラフ作動時では+10秒近くと出た。着用テストでもデータ値は同じような域に収まり、ジョギング中に着用してもさほど大きな変化は見られない。しかし振り角は良好なデータが出ている。これは勤勉なイメージが定着しているバルジュー7750の働きぶりの賜物だ。


 キャリバーML112の実直さはシースルーバック越しにも見て取ることができる。装飾はローターと自動巻き輪列受けのコート・ド・ジュネーブと、地板のペルラージュのみと、シンプルに抑えられている。ムーブメント全体を子細に眺めても、パーツには引っかきキズなどの作業の痕跡が全く見当たらないのは見事。アッセンブリー作業に関わる時計師の技術の高さがうかがえる。この時計は裏側から見ても非常に丁寧に作り上げられていて好感が持てるのだが、欲をいうなら、表側の文字盤の押し出しの強さに釣り合う“華”も欲しいところだ。


070730mau3.jpgフォルムの美しい堅牢なフォールディングバックル。ポントスだけに使用されている。

全方位的な快適さと調和という価値観

 総評すると、今回のポントス クロノグラフは顔立ちの良さを引き立てる良い仕事がなされているといえる。ことに文字盤にブランドネームのみを表示し、ロゴを削除したいさぎよさは高く評価したい。価格は23万1000円と、ポントス・ラインの中ではやや高めの設定だが、イメージ的にモーリス・ラクロアと並ぶ他のブランドと比べると、クロノグラフの価格としてはそれほど高くはないだろう。


 中間価格帯クラスのアッパーモデルというのは、多くのブランドでもあまり手をかけたがらない分野だが、ポントス クロノグラフはその意味で今後ひとつの基準になるのではないだろうか。無理のないデザイン、加工レベルの高さ、着用時の快適さはこのクラスの腕時計の「売り」になっていくだろう。ポントス・ラインのモデルは練り上げられた「調和」が基盤になっている。ラクロア・ファミリーに家族がひとり増え、時計ファンにとっては、知り合いのファミリーが成長していくのを見守るような、ナチュラルなうれしさを感じることだろう。

スペック

製造者:
モーリス・ラクロア、Zurich/Switzerland

Ref.:
PT 7538/48-SS001-330

機能:
時、分表示、スモールセコンド(ストップセコンド仕様)、シングルハンドクロノグラフ(フライバック仕様)、30分積算計、12時間積算計、日付表示

ムーブメント:
Cal.ML112(自動巻き、ベースにバルジュー7750を使用)、直径30.00mm、厚さ7.90mm、両方向巻き上げ式ローター、スムーステンプ、偏心緩急装置、耐震軸受け(インカブロック使用)、振動数2万8800/時、30石、パワーリザーブ約42時間

ケース:
SSケース、無反射コーティング風防(サファイアガラス使用)、スイッチ型プッシュボタン、シースルーバック(スナッチ式、無反射コーティングサファイアガラス使用)、5気圧防水

ストラップと尾錠:
クロコダイル風型押しレザー、SS製フォールディングバックル

精度テスト結果

(日差 秒/24時間)

通常時/クロノグラフ作動時

文字盤上 +3 +7

文字盤下 +6 +8

3時上  +8 +12

3時下 +11 +10

3時左 +5 +8

3時右 +15 +13

最大日差 12 6

中間日差 +8 +9.7

中間振り角:

水平姿勢 290゜270゜

垂直姿勢 271゜252゜

サイズ:
直径43.00mm、厚さ14.10mm、総重量117g

価格

23万1000円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です

記事掲載号

2006年3月号(No.003) 定期購読申込 バックナンバー常設店

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