【スペックテスト】 ブライトリング/ナビタイマー・ワールド
BREITLING
NAVITIMER WORLD
飛行家のための世界観
文:イェンス・コッホ/写真:imagina/翻訳:市川章子
半世紀以上にわたってパイロットや航空ファンから厚い信頼を寄せられているナビタイマーに、セカンドタイムゾーンを持つ実用的なバリエーションが加わった。歴代のモデルの中でも最大級となるサイズには、現実的な利点も備わっている。
○と×:
○・仕上げ加工が最上級レベル
・ムーブメントの精度が高い
・適正な価格設定
×
・ストラップが堅い
クロノス評価:
・ストラップとバックル(最大10ポイント) 9pt.
・操作性(5) 5pt.
・ケース(10) 9pt.
・デザイン(15) 14pt.
・視認性(5) 5pt.
・装着性(10) 7pt.
・ムーブメント(20) 15pt.
・精度安定性(10) 9pt.
コストパフォーマンス(15) 13pt.
合計86pt.

裏蓋の下に息づくブライトリング24。ETAのバルジュー7750をベースにセカンドタイムゾーンのメカニズムが加えられている。ケースとの大きさの差を補う中詰めリングには、ペルラージュの美しい装飾がなされ、質の高い仕上がりを見せる。
機能性を追求して
空を飛ぶことを人類は長年夢見てきた。20世紀初頭にそれは実現したが、飛行機が交通手段のひとつになったのは、1920年代を経て30年代になってから。多くの人間が飛行機を身近に感じるようになったのは、さらにそれ以降のことだ。
ブライトリングのナビタイマーは52年の登場以来、多くのパイロットや飛行機愛好家たちのお供をしてきた。ナビタイマーはパイロットウォッチの代表格のひとつとして絶大な人気を誇り、この50年、その魅力は色あせていない。
ブライトリングは42年に世界初の計算尺付き腕時計を発売したが、その10年後にパイロットのための実用性を踏まえて出来上がったのがナビタイマーだ。英語の「ナビゲーション」と「タイマー」からくるペットネームは、ベゼルが下降比率計算やメートルからマイルへの換算など、さまざまな計算の助けになっているところからきている。AOPA(エアクラフト・オーナーズ&パイロット・アソシエイション)から公式時計として選定されているのもナビタイマーだ。そのためファーストモデルはブライトリングのロゴに代わってAOPAのロゴが入れられていた。
ところで、ナビタイマーでパイロットの役に立っているのは計算尺だけではない。クロノグラフもコクピットの中での作業をよりよくサポートしてくれるのだ。前のナビゲーションポイントからどれだけ時間が経過したか、クロノグラフを使うと簡単に読み取ることができる。これは個人飛行の場合に役立つ機能だ。
熱狂的な人気を誇る歴史あるパイロットウォッチ。
その他にパイロットに必要なものといえばセカンドタイムゾーンである。航空図もしくは管制塔とのやりとりでは、時間はUTC(ユニバーサル・タイム・コーディネイテッド=協定世界時)を使用することになっている。UTCは我々が地上で使う時間より、冬は1時間、夏は2時間進んでいる。そこで出番なのが今回のテストウォッチのナビタイマー・ワールドだ。セカンドタイムゾーンを装備したこのモデルの登場により、ナビタイマーシリーズに完璧な機能のパイロットウォッチが加わったことになる。
04年発表のこのモデルは積算計が増設されたシンメトリーのトリコンパックスタイプ。ファーストモデル同様、積算計は文字盤と同色だ。しかしカラーやインダイアルの配置よりもさらに目を引くのはサイズの違いだろう。このモデルは直径46mmと、41.8mmの従来型に比べて大型となった。その違いを飛行機に例えるならば、新型がエアバスA 380とすると従来型はさしずめスポーツセスナ機といったところだろうか。
さてパイロットウォッチで何より大事なのは、素早く読み取れる視認性だ。それには当然ながらサイズも重要なファクターとなる。もっとも、ナビタイマー・ワールドでは直径が広がった分、エリアはセカンドタイムゾーンと計算尺にあてられている。表示は読み取りやすく、振動にさらされる航空機のコクピットの中のみならず、地上で使用するときにもうれしい仕上がりである。通常、計算尺の細かい目盛りを見極めるのは、必ずしも楽な作業ではないのだ。
通常の時間の読み取りに関しては、改良すべきところはほとんど見当たらない。これこそがナビタイマーの規範たるところだ。文字盤はブラックタイプのほうがやはりメリハリが利いているものの、シルバーやブルーのタイプでも問題はない。

読み取りやすい表示、仕上げの質の高いケース&ダイアル。それでも価格は高価な設定ではない。非常に魅力あるモデルだ。
仕上げ加工、視認性、ムーブメント……完成度は非常に高い。
文字盤上に目を移そう。24時間表示のインデックスや、セカンドタイムゾーン用の針の先端は、読み取りやすいように色で区別されている。また、たくさんのインデックスや数字、計算尺の目盛りや針の下にインダイアルがひしめくこのモデルは、コクピットの計器類の猥雑さを想わせるが、その中でシルバーカラーのアップライトインデックスはエレガントさを放っている。そして同様に磨かれた長・短針やクロノグラフ針の端にブライトリングのBと錨をあしらっているあたりにも、上質な作りの良さがにじみ出ている。インデックスの夜光の部分をインダイアルの外側を取り巻くように置いているところも絶妙で、夜間に優れた視認性を発揮する。
ところでナビタイマー・ワールドは通常のナビタイマーと異なり、ETAのバルジュー7750をトリコンパックス仕様に増築したものだ。既存のナビタイマーで3時位置に置かれている30分積算計は、12時に移されている。この配置だと素早い日付修正のメカニズムの邪魔にならないので、より実用的という利点がある。そしてリュウズにも操作性の良さが光っている。つまみやすく、引き出すときも第2ポジションと第3ポジションの違いが明確に分かる。第2ポジションでは日付を先送りにして修正できるが、この位置のまま逆方向に巻くとセカンドタイムゾーンの針が進んでいく。リュウズを第3ポジションまで引き出すとセンター秒針が止まり、長・短針の針合わせが可能。このように、すべての表示は迅速かつ正確に設定できるようになっている。
ナビタイマーは旅行時にも実用的で便利な腕時計といえる
ノスタルジックな形状のプッシュボタンもスタート・ストップ・リセット時に極端に強く押す必要はない。べゼルも模範的な動きで正しい位置に止められる。スムーズに回すことができるが、それでいて不用意に位置がずれるようなことはまずないのである。
もちろん、セカンドタイムゾーンはUTCに合わせるほかに、通常の異なるタイムゾーンに合わせることも可能だ。ナビタイマーは旅行時にも実用的で便利な腕時計といえる。裏蓋には中心を取り囲むように世界の主要都市とロンドンからの時差がエングレービングで記されている。これを見れば現在自分がどのタイムゾーンにいるのかが分かり、ローカルタイムとホームタイムとの調整もしやすい。
裏蓋の中心は一段低くなっていて、ブライトリングのロゴが浮き彫りされている。ケースのその他の部分も極上の仕上がりだ。そしてラグの内側など、あまり人目につかないようなところさえも完璧な研磨で仕上げられている。文字盤のプリントは非常に細やかで、インデックスや針の研磨もやはり完璧だ。
しかし細かいことながら気になる点も発見した。回転ベゼルの目盛りが完全には合っていないため、右上のあたりにごくわずかなスレが出ているのだ。しかしこの程度ならエンド部分をうまく調整すれば問題ないだろう。
今回のテストウォッチは、厚さに膨らみを持たせたバレニア革のストラップを採用していた。明るい色のステッチでメリハリが利いたストラップは、取り付け幅が24mmとプロポーションもよく、時計本体にとても似合っている。断ち切りの縁は丁寧に塗りが施され、時計全体に見合った高級感が漂っている。ストラップは使い始めがかなり堅く、手首に圧迫感を感じる。しかしこれは時が経つにつれ肌に馴染むだろう。それよりも裏蓋のふくらみのほうが腕への収まりを妨げていて、フィット感は完璧とまではいえない。ウイング付きのBを入れた尾錠も、スポーティさを醸し出している。もっとも、仕上げに関してはケースほど手がかけられていない。尾錠の内側もラグと同じく目につかない部分だが、加工最後の化粧仕上げが抜けているような印象だ。
ドーム型の裏蓋を外すと現れるのは、駆動を一手に担ったキャリバーのブライトリング24。ムーブメントはETAバルジュー7750をベースに手を加えたものだ。キャリバー24はブライトリングの他のキャリバーと同様に、スイスの公式クロノメーター選定機関であるCOSCに認可されている。このムーブメントはETAから完成された状態でそのままクロノメーター試験に送られるのではない。各パーツはラ・ショー・ド・フォンの自社施設で独自の水準まで引き上げ、一部のパーツは加工し直す工程を踏まえる。その結果、ひげゼンマイの能力は上がり、テンプの回転モーメントはより高い安定性が得られている。すべてのパーツはこのようにしてフィニサージュされた後に組み立てられ、調整が行われるが、最終的にケースに装填されるのはCOSCの15日間の試験に合格したものだけだ。

ステッチが鮮やかにきいたストラップを固定する尾錠には、ブライトリングのマークが入っている。ちなみに、ストラップはカーフ、クロコダイル、バッファローの3種類が用意され、それぞれ穴止め式と折りたたみ式を選べる。さらに、ブレスレットの選択も可能だ。
フライト前の高揚感を思い出させる魅力的モデル。
我々のテストでも検査器でのデータは、ブライトリングスタッフの労が報われる結果になっている。姿勢差は最大日差6秒を記録し、クロノグラフ作動時もデータに変化はなかった。平均日差も2秒強と1秒強の間を動く程度だったのは、夢のような出来事といえよう。振り角も高い値にとどまっていて喜ばしい限り。コクピット内での計測を委ねるにふさわしく、まさしく精密計測器といえる一品だ。
精度は雲の上ほど高いが価格は地に足がついている。48万8250円というナビタイマー・ワールドの値段は、セカンドタイムゾーンの増設や大型化によって目盛りが読み取りやすくなったことを考えると、それほど高いとは感じられない。
ナビタイマー・ワールドの魅力は良い飛行機の条件と共通する。シックなデザイン、最高のパフォーマンス、そして何よりも優れた操作性は航空ファンの心をくすぐるのだ。手にしただけで湧き起こる離陸直前の高揚感。さあ発進しよう!
スペック
製造者:
ブライトリング:Grenchen/Switzerland
Ref.:
A-24322-041
機能:
時、分、秒(スモールセコンド、ストップセコンド仕様)、クロノグラフ(シングルハンド、30分・12時間積算計)、日付表示、セカンドタイムゾーン表示、計算尺
ムーブメント:
ブライトリング24(自動巻き、ベースキャリバー:ETA-バルジュー7750)、直径30.00mm、厚さ7.90mm、振動数2万8800/時、スムーステンプ、耐震軸受(インカブロック使用)、25石、パワーリザーブ約42時間、COSC認定公式クロノメーター
ケース:
SS製、サファイアガラス(ドーム型、両面無反射コーティング加工)、ドーム型スクリューバック、3気圧防水
ストラップとバックル:
バレニアストラップ、SS製尾錠
精度安定試験:
(日差 秒/日、振り角)
文字盤上 +6/+5
文字盤下 +4/+2
3時上 0/ 0
3時下 0/-1
3時左 0/0
3時右 +3/+2
最大日差 6/6
平均日差 +2.2/+1.3
平均振り角:
水平姿勢 308°317°
垂直姿勢 270°290°
サイズ:
直径:46.00mm、厚さ:15.50mm、総重量:130g
価格:
48万8250円
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。
記事掲載号
2006年7月号(No.005) 定期購読申込 バックナンバー常設店・掲載されている記事・画像・イラスト・動画などの無断転載を禁止します。
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