【スペックテスト】 ヴァシュロン・コンスタンタン/オーヴァーシーズ・クロノグラフ

VACHERON CONSTANTIN
OVERSEAS CHRONOGRAPH
コードネームは「249」
文:アレクサンダー・リンツ/写真:クリスティアン・シェルク/翻訳:市川章子
改良は成長の軌跡を物語る。ヴァシュロン・コンスタンタンの70年代モデルの中で、いまやコレクターのマストアイテムとなっている通称「222」は、27年の歳月を経た2004年、「249」にバージョンアップした。21世紀の新モデルはどのような点が向上したのだろうか。
○と×:
○・高い耐磁性を備えている
・クラシカルなデザインが文句なしに魅力的
×
・ストップセコンド仕様になっていない
・時・分針が短かすぎる
クロノス評価:
・ストラップとバックル(最大10ポイント) 10pt.
・操作性(5) 3pt.
・ケース(10) 10pt.
・デザイン(15) 13pt.
・視認性(5) 5pt.
・装着性(10) 10pt.
・ムーブメント(20) 18pt.
・精度安定性(10) 7pt.
・コストパフォーマンス(15) 11pt.
合計87pt.
ピラーホイール使用のクロノグラフの銘機、FPの1185を原型にクイックチェンジの大型日付表示を組み込んだFP6885を搭載している。
29年前の逸品を祖とする、華麗なクロノグラフ
29年前、ジュネーブ最古を誇るマニュファクチュール・ブランドであるヴァシュロン・コンスタンタン(以下VC)は、きわめて特殊なモデルを出すという勇気ある行動に出た。頑健なステンレススチールケースに特徴的な同素材のブレスレット、そして人目を引くベゼルに皆がピクリと反応した。この時計は通称「222」のコードネームで呼ばれた。
これは別に暗号だったわけではなく、数が222本限定だったところから来ている。1977年にVCの創立222年を記念して発表されたモデルなのだ。同社の広報によるプレスリリースには次のように記されている。「私どもヴァシュロン・コンスタンタン(当時の日本語表記では“バセロン・コンスタンチン”)は機能的でコンテンポラリーな、当社ならではの時計を発表いたします。この新作のコードネームともいうべき「222」には私どもの誇りが込められています。
「222」の先進性に時代は遅れて追いつく
吟味された言葉で綴られながらもやや華やかさに欠けた宣伝文だったこのモデルは、同時代に発表されたオーデマ ピゲのロイヤル オークやパテック フィリップのノーチラスなどのようなロングランヒットには至らなかった。ジャガー・ルクルトキャリバー搭載の完璧な仕上げ加工のモデルだったにもかかわらずだ。しかし現在では、時計コレクターにとって、70年代モデルの欠かすことのできない一本となっている。そしてこのモデルこそが、それから19年後に登場した「オーヴァーシーズ」の原型となった。
旧バージョンのオーヴァーシーズにおける我々の評価は高いが、たったひとつの難点はメタルブレスレットである。というのも堅すぎてスムーズに動かなかったのだ。輪が重たく感じられ、しかもブレスレットのコマがすぐ腕の毛を挟んでしまい、悩まされる作りだったのだ。しかしケースと文字盤はほとんど文句なしの出来栄えで、フレデリック・ピゲ(以下FP)を基にしたキャリバーも同様に批判の余地を与えなかった。
ディテールは熟慮の上、丁寧に作られている
それから8年の月日が流れ、機が満ちて新バージョンのオーヴァーシーズ・クロノグラフは発表された。2005年の創立250年を目前に(訳者注:2004年の発表時)、機械式複雑時計の革新を祝うにふさわしいモデルだ。革新といってもまったく新しいものが発明されたわけではない。それは過去の時代に時計界がすでに十分なだけやってのけている。249の発表も222のときと同様に控えめであることを旨としていたが、旧バージョンで欠けていた部分は補い、より洗練されたことは間違いない。
まず、文字盤の下では、FPキャリバーが軟質スチールのインナーケースに格納され、今日、至る所から受ける磁気の影響から守られている。さらに、ブレスレットには格段の改良が加えられた。旧バージョンとはなんたる違い! 表面はなめらかでしなやかに動き、縁も鋭くない。バックルも機能的で、マルタ十字は鏡面とサテンの両研磨で手をかけて仕上げるスタイル。外観も肌触りも、価値高い時計にふさわしい仕上がりだ。ケースとブレスレットを製造したのは専門メーカーのHGTプティジャン社。VCの他、リシュモン傘下のメーカーに供給を行っている。
ケース表面は鏡面仕上げとサテン仕上げの組み合わせが美しい。最高水準の加工技術がデザインの良さを引き立てている。また、クロノグラフのプッシュボタンはねじ込みが可能。ねじ込まない状態でも15気圧防水はキープされている。
バランスの良い文字盤、見栄えの良い仕上げ
ケースのデザインも全体によくなじむプロポーションで、仕上げも非常に細やか。角という角はすべて慎重に研磨されて鋭いところはなく、鏡面とサテンの調和を崩すことなく仕上がっている。ケースは恰幅よく、直径は42mmある。しかし文字盤を取り巻くベゼル内だけを測ると34mm。このおかげで、これだけの大きな時計でもそれほど圧迫感を与えず、手首が細い人にも違和感なく映える。そして無反射コーティング加工のサファイアガラスの下には、分と秒の目盛りが入ったリングが置かれ、文字盤の内側はさらに縮められている。結局、実質的な文字盤直径は28mm。ケース径が42mmとは思えないバランスの良さは見事だ。
文字盤はギョーシェ彫りで仕上げられていて、堂々たる印象。大型日付表示の位置取りも完璧だ。文字盤を薄目を開けたような状態で見たとしても、見づらいと感じない構図の妙がある。ことに評価すべきはふたつの積算計がスモールセコンドよりはっきり浮き上がって見えるように設計され、ミニッツカウンターにぎりぎり最大限の面積を持たせた点だろう。
しかしそれに対し、ミニッツカウンターの針は明らかに短いサイズなのが気になる。センターのクロノグラフ針も同じく短めで、円の端まで届いていない。長さが合っていないのは外周リングも同様で、秒の目盛りは分の目盛りよりかなり短い。また、針合わせと日付修正はリュウズで行うが、ストップセコンド仕様になっていないのは惜しいところ。これでは秒単位で正確な針合わせは難しい。
FPキャリバー6885ベースの、VCキャリバー1137
FPキャリバー6885は、ピラーホイール使用のクロノグラフキャリバーとして名高い11 1/2リーニュの1185がベースになっている。そこへ深夜瞬時に日付表示の切り替わるカレンダー機構が組み込まれた。旧バージョンのオーヴァーシーズがそうであったように、以前の日付表示は桁を区切らずに表示する方式が長らく採用されていた。今回の新バージョンの日付表示には、古典的なリング状のデイホイールと数字の入らない白い部分のある十字形のホイールが使われている。
これは技術上の特徴を強調するポイントだ。技術上の特性は耐磁気システムにも表れている。このモデルにはスリーピース(文字盤側、裏側、サイド)の軟質スチールのインナーケースを採用し、ムーブメントは2万5000アンペアまでの耐磁性を誇る。
テストウォッチでも極めてよい精度が確認された。文字盤を上にした平置き状態では、振り角は注目すべき高い安定性を見せた。これこそがFPキャリバーの典型的特性なのである。特筆すべきは、クロノグラフ作動時にはさらに良好な結果が出たことだ。電動式検査器のデータは平常時で日差+5秒以内、クロノグラフ作動時は+1秒だった。着用テストでは日差は+6秒前後になった。
改良点の筆頭に上がるのはブレスレット。動きも肌触りも格段になめらかになった。
27年の歳月。進化の跡が確認できる
創立250年を機に、装いを新たにしたオーヴァーシーズ・クロノグラフは、改良されて魅力が増したことには疑いの余地がない。なかでもバージョンアップポイントのトップに挙げられるのは、なんといってもブレスレットだということは再度書き加えたい。もちろんブレスレットだけではなく、各部に進化の成果が見られることが、このモデルの看板になっているのだが。
「222」の出現から27年の歳月を経た04年に発表された新バージョンは、さまざまなノウハウが揃った現在だからこそ成し得たモデルなのであろう。この新型にはやはり創業年から数えたナンバーの「249」をコードネームに与えたい。そして次の27年後にコードネーム「276」となるべきモデルにはいかなる変化が見られるのか、大いなる期待に、すでに胸の高鳴りを感じてしまうのだ。
スペック
製造者:
ヴァシュロン・コンスタンタン、Geneve/Switzerland
Ref.:
X49A6954
機能:
時、分、秒(スモールセコンド)、シングルハンドクロノグラフ、30分積算計、12時間積算計、大型日付表示(12時位置に設置)
ムーブメント:
1137(自動巻き、ベースキャリバーFP6885):直径25.6mm(11 1/2リーニュ)、厚さ6.6mm、振動数2万1600/時、スムーステンプ(ベリリウム・コッパー)、耐震軸受け(KIF使用)、マイクロメータースクリュー式緩急調整システム、ベアリング内蔵片方向巻き上げ式ローター(18KYG)、37石、パワーリザーブ45時間±5%
ケース:
SS製スリーピースケース、サファイアガラス(無反射コーティング)、裏蓋は8カ所ビス留め、リュウズとプッシュボタンはねじ込み式、15気圧防水
ストラップとバックル:
SS製ブレスレットおよびフォールディングバックル
サイズ:
直径42.00mm、厚さ12.45mm、総重量182g
精度テスト結果:
(日差 秒/日、振り角)
平常時/クロノグラフ作動時
文字盤上 +5/+3
文字盤下 +6/-2
3時上 -1/-3
3時下 +3/+1
3時左 - -
3時右 +10/+2
最大日差 11/6
平均日差 +4.6/+0.2
平均振り角:
平行姿勢 318°/307°
垂直姿勢 272°/259°
価格
価格:173万2500円*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事の抜粋です。
記事掲載号
2006年5月号(No.004) 定期購読申込 バックナンバー常設店・掲載されている記事・画像・イラスト・動画などの無断転載を禁止します。
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