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Chronos日本版

【スペックテスト】 IWC ポルトギーゼ・F.A.ジョーンズ

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IWC
PORTUGIESER F.A.JONES

由緒正しき大型キャリバー。

文:イェンス・コッホ/写真:Imagina、金沢文春/翻訳:市川章子

大型ウォッチの人気はいまだ衰えを見せない。しかし大多数のムーブメントは小さく、ケースとの大きさが揃っていないのが実情だ。腕時計の先祖たる懐中時計のムーブメントを搭載した「大型本格派」は古典のゆかしさを、どのように現代に表現しているのだろうか。

○と×

・粋なデザイン

・伝統を受け継いだムーブメント

・全体的な出来が非常に良い

×

・ムーブメントの仕上げが今ひとつ細やかさに欠ける

・価格設定がやや高め

クロノス評価:

・ストラップとバックル(最高10ポイント) 9pt

・操作性(5) 5pt.

・ケース(10) 8pt.

・デザイン(15) 14pt.

・視認性(5) 4pt.

・装着性(10) 10pt.

・ムーブメント(20) 15pt.

・精度安定性(10) 9pt.

・コストパフォーマンス(15) 11pt.

合計85pt.


03iwc1.jpg往年のジョーンズ・キャリバーにならい、3/4スケールのメインブリッジ、超ロング緩急針を使用している自社キャリバー98290。

大型ウオッチには、ふさわしいムーブメントを

「人の器は中身で決まる」。なんとも含蓄のある言葉だが、この格言を昨今の腕時計に当てはめるとすると、ちゃんと体現できているブランドは少ないだろう。時計界ではこの何年か大型ウォッチがひとつの傾向になっている。それなのにムーブメントは小さいままのものがほとんどだ。それゆえに懐中時計の中では大きなムーブメントが動いていたと、製造に携わる人間がその存在に気づくにはそれほど時間がかからなかった。


 しかしながら今日、懐中時計のキャリバーとして流通しているものはETA製のユニタス6497もしくは6498のみ。そのため、このふたつのキャリバーは腕時計にも幾度となく採用されてきた。そして次第に少々の仕様変更もよしとされるようになり、チラネジ付きテンプやスワンネック緩急針が使われるようになってきたのである。そんな現状にあって、IWC(アイ・ダブリュー・シー)は昨年、注目すべきモデルを発表した。ポルトギーゼ・F.A.ジョーンズは、IWCが自社の懐中時計の伝統を取り入れたモデルである。

「ジョーンズ・キャリバー」の特徴を受け継ぐ

 IWCは1868年、アメリカ人のフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズによってボストンに設立された。当時のスイス時計界には専門能力の高い人材が多く、低賃金であるにもかかわらず、最新の水力式機械が導入されているという好条件が揃っていた。そこに魅せられたジョーンズはライン河畔のシャフハウゼンへと移ってきたのだった。


 本人自身も時計師だったため、IWCの第1号キャリバーは彼の設計による。コレクター間で「ジョーンズ・キャリバー」と呼ばれるこの懐中時計ムーブメントは、テンプ受けから4分の3スケールのメインブリッジまで届く長い緩急針が目を引く。この特徴的な外観を受け継ぐムーブメントが搭載されているのがポルトギーゼ・F.A.ジョーンズである。


懐中時計に範を取るクラシカルなディテール

 このモデルのコンセプトは「懐中時計」だ。ムーブメントのみならず、文字盤と針の形状も古い懐中時計に範を取っているという、夢のような一品だ。ほとんどエナメルと見紛うばかりの美しい白色の文字盤には、創始者ジョーンズ自身の筆跡によるネームが入っており、ほっそりとしたローズゴールドのブレゲ針、アールのたおやかなアラビア数字、メインサイドをサテン仕上げにした美しいポルトギーゼケース、存在感のある玉ネギ形リュウズと、役者が揃っている。


 すべてが見事なまでの調和を見せ、ことにローズゴールドタイプは極上の仕上がりだ。このモデルの出来栄えの良さは、19世紀末期のエレガントな懐中時計をはっきりと思い出させる。そして当然ながら、精度に優れた頑健な懐中ムーブメントを内蔵した、1930年代のポルトギーゼのファーストシリーズにも想いは及ぶのである。
 ポルトギーゼ・F.A.ジョーンズに搭載されるキャリバー98290は、数字が示すとおりキャリバー982がベースだ。IWCは生産の主流ではないものの、テンプ受けが特徴的なこの懐中ムーブメントをまだ製造している。

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クラシカルな雰囲気を感じさせる玉ネギ形リュウズ。大きくてつまみやすいので、操作性も良い。ケースサイドはサテン仕上げ。横方向と縦方向のコンビネーションは、好みが分かれるかもしれない。

特徴的な超ロング緩急針。往年のデコレーション

 ベースキャリバー982は4分の3スケールのメインブリッジにスワンネック緩急針を使用しているが、98290ではジョーンズ・キャリバーの特徴である超ロング緩急針を使用、丸穴車と角穴車にはサンバースト装飾研磨が入れられ、見た目にも美しい仕上がりになっている。地板の装飾もかつての懐中時計にならったもので、麗しい曲線の筆記体ロゴとジグザグ模様で往年の典型的デコレーションが再現されている。


 もっとも、加工の細やかさに関していえば、昔の懐中時計のほうが際立っていたかもしれない。今回のモデルでは、地板の面取りはされているが、その部分を鏡面に磨き上げるところまでは手がかかっていない。緩急針の側面も同様だ。エンジニア精神あふれるメーカーとしては、装飾より設計に重点を置いたというところか。


 フィニッシュを後から手仕上げで行うブランドのモデルと比較してしまうと、ポルトギーゼ・F.A.ジョーンズはその域には達していない、というのが正直な感想だ。安価な時計ではないのだから、こうした細かい部分にも手を加えてほしかった。我々としては、仕上げ加工が、メインブリッジやテンプ受けに入っている細かいサンバーストの技術レベルで統一されているのが望ましいと思うのだが。

マスロットリングを備えたチラネジ付きのテンプ

 キャリバー98290は元祖ジョーンズ・キャリバーと異なり、時代にかなったスタイルになっている。耐震軸受けにはインカブロックを使用、そしてストップセコンド仕様になっている。歩度調整は、まずテンプのアームの両端についているマスロットリングで大まかなところを押さえ、さらに緩急針で微調整をする方式。これらの姿はしっかりとネジ留めされたケースバックから見ることができる。


 このあたりは手間ひまかけた甲斐が精度に現れており、検査器の結果はすべての姿勢で0秒から+5秒以内に収まっている。しかし、着用テストではコンスタントに進みが見られ、1日で+4秒のデータが出た。ところで、ムーブメントのパーツのうち数点は、製造キャパシティの理由からIWCではなくマニュファクチュール・コンプリカシオン(MC)で作られたものだ。このパーツ工場もリシュモン傘下にあり、ピアジェなどの他のブランドにも供給が行われている。


03iwc3.jpg美観と実用性を兼ね備えた尾錠。クロコダイルの模様も美しく揃っており、尾錠との相性も非常に良い。

使用感は上々であるが、気になる部分も

 使用感も上々だ。玉ネギ形リュウズは大型なので人差し指のかかりも良く、引き出すことも針合わせも楽に行うことができる。ケース直径はかなりあるものの、模様がきれいに揃ったクロコダイルストラップとローズゴールドの出来の良い尾錠が腕によくなじんでくれる。


 視認性も昼間は一発で時間が分かるほどに優れているのだが、夜光塗料が使われていないため、あたりが暗くなると事情が違ってくる。数字はブロンズカラーのメタリックラッカーでプリントされていて、ケースと針にとてもよく似合っている。しかし目を近づけてみると、塗りがさほどきめ細やかというほどではないのが惜しいところ。


 そこが気になる向きには数字がブルーのステンレススチールバージョンがお薦めだ。同じく細かなことについていうと、ケースのラグの上下間(ケースサイド)と左右間のサテン仕上げが同方向には統一して入れられていない。これはもちろん好みの問題でもあるだろう。それよりも一番気になる点はなんといっても価格に尽きる。この金額はシンプルな手巻きとしては、限定モデルであることを考慮してもかなり高額ではないだろうか?


進化を雄弁に物語る「中身」

 ちなみに、IWCは1993年にもポルトギーゼの記念モデルを発表している。「ジュビリー」と名付けられたこのモデルは自社の懐中時計キャリバー982を搭載し、ステンレススチールモデル1000本、ローズゴールドモデル500本、プラチナモデル250本の限定で発売された。現在ではコレクターが探し求めるモデルのひとつになっている。今回のポルトギーゼはこれに比べれば大盤振る舞いで、ステンレススチールモデルが3000本、ローズゴールドモデル1000本、プラチナモデル500本の限定だ。


 大型モデルは現行品に数多く見られるが、一般的に購入を最終的に決断する要素は、形状の美しさと仕上がりの細やかさではないだろうか。ポルトギーゼ・F.A.ジョーンズは懐中時計の伝統を踏襲した気品ある外観を備えている。そしてそれ以上に真価を雄弁に物語っているのは中身だ。人も時計も「器は中身で決まる」のである。

スペック

製造者:
IWC Schaffhausen/Switzerland


Ref.:
IW544201


機能:
時、分、秒(スモール/ストップセコンド)


ムーブメント:
Cal.98290(手巻き/ベースキャリバー982)、直径37.80mm、厚さ4.70mm、振動数1万8000/時、耐震軸受け(インカブロック使用)、超ロング緩急針、ブレゲヒゲゼンマイ、チラネジ付きテンプ(マスロット歩度調整リング2点付き)、18石、パワーリザーブ約46時間


ケース:
18KRGケース、シースルーバック(6カ所ネジ留め、サファイアガラス使用)、無反射サファイアガラス風防(ドーム型)、3気圧防水


ストラップと尾錠:
クロコダイルストラップ、18KRG製尾錠

精度テスト結果

(日差 秒/24時間、振り角)

文字盤上  +5

文字盤下 +5

3時上  +1

3時下  +1

3時左 0

3時右 +2

最大日差 5

中間日差 +2.3

中間振り角:

水平姿勢 308゜

垂直姿勢 289゜


サイズ:

直径43.00mm、厚さ11.70mm、総重量101g


特記事項:

限定数1000本

価格&問い合わせ


182万1750円
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事の抜粋です。

記事掲載号

2006年3月号(No.003) 定期購読申込 バックナンバー常設店

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