【スペックテスト】 ジャガー・ルクルト/AMVOX1アラーム
JAEGER-LE COULTRE
AMVOX1 ALARM
スポーティなアラーム時計
文:イェンス・コッホ/写真:imagina、金沢文春/翻訳:市川章子
自分の好きな時刻にアラームを鳴らす。この優雅かつ実用的な機能を持つ時計に、“スポーティ”という新しいテイストを加えたのが、ジャガー・ルクルトのAMVOX1アラームだ。そのデザイン性、伝統を踏襲した機能性を検証しよう。
○と×:
○・アラーム音の響きが心地よい
・デザインが美しくまとめ上げられている
×
・日付の素早い修正ができない
クロノス評価:
・ストラップとバックル(最大10ポイント) 8pt.
・操作性(5) 4pt.
・ケース(10) 8pt.
・デザイン(15) 14pt.
・視認性(5) 5pt.
・装着性(10) 9pt.
・ムーブメント(20) 16pt.
・精度安定性(10) 8pt.
・コストパフォーマンス(15) 13pt.
合計85pt.

Cal.918は他メーカーのアラームモデルと比較しても細やかな仕上がり。精度データも良い結果が出た。
アラームと暮らす愉しみ
アラーム時計は犬と似ている。昼間一緒になって遊ぶのは楽しいが、ベッドから出るのが億劫な寒い朝であっても、こっちの都合はお構いなしに散歩に連れて行けと声を大にして主張し、起きることを強要するあたり、かなり共通するものがある。そして犬にも繊細な可愛らしい種類もいれば、獰猛な強面もいるように、アラームといっても幅広いバリエーションが存在している。
アラームウォッチに関して、50年以上の伝統を誇るジャガー・ルクルト(以下JLC)は、自動車メーカーのアストンマーティンとのコラボレーションであるAMVOXシリーズにも、その技術を引き継がせた。このシリーズは、スポーティ・エレガンス・コレクションとして、同社の新たな方向性のひとつを示すものだ。今年になってこのシリーズにはクロノグラフのAMVOX2も加わり、今後ますます充実していくことが予想される。
今回のテストモデルで最初に目に入るのは、アラーム時刻設定ゾーンだろう。12時間表示の内側をぐるりと囲んだリングのうち、270度の部分を馬蹄形にして、際立つデザインにしている。これはアストンマーティンのタコメーターをシンボライズしたものだ。また、既存のデザインに範を取っている部分もある。通常のものよりも長さに差を持たせた時・分針は、今や伝説的となった65年発表のアラーム付きダイバーズウォッチ“ポラリス”の形を踏襲している。アラーム時刻リングの外側に配置された12時間表示の字体も、針合わせを3つのリュウズのうち真ん中のもので行うのも、ポラリスの基本設計と同じだ。さらに孔開きの反響板が裏蓋に取り付けられているところにも、当時のスタイルが生かされている。
スポーティ&エレガンスなJLC伝統のアラームモデル
このモデルの視認性は完璧に近い。すっきりした字体の数字と、夜光部分をたっぷりとった針のコントラストは黒い文字盤によく映え、時間をひと目で読み取れる。それでも、明快に配置されたそれぞれの役割にはやはり少々解説が必要だろう。文字盤の一番端に置かれているのは可動式のインナーリング。この部分に入っている数字は大ぶりな12時間表示に比べてかなり小さい。小さな数字の真下の逆三角形のインデックスも、目盛りに同化した控えめな大きさに揃えられている。インナーリングで小粋な技が光るのは、10分刻みの位置にあるバーインデックスだ。先端はリングから飛び出し宙に浮いていて、文字盤中心に向かってせり出た格好になっている。
さて、アラーム時刻設定リングをもう一度見てみよう。270度にトリミングされた銀色の部分の切れ目は、カラーを反転させた黒地のゾーンによって輪をつないでいる。このリングは1時間ごとに3つの目盛りが入れられていて、15分刻みでのアラーム時刻の設定が可能だ。設定は2時位置のリュウズを引いて行う。リュウズを元通りに押し込むとスイッチオンの状態になる。ところでアラーム時刻設定用の針は、実際は針ではない。これはJLCのアラームではよく見られる手法なのだが、一見すると独立した針のように見える部分は円盤にプリントされていて、時刻設定時この円盤が回るようになっている。

文字盤で目を引くのは、馬蹄形のアラーム時刻設定目盛り。デザインのアクセントとして役立つこの目盛りは、アストンマーティンのエンジン回転計をモチーフとしている。
アストンマーティンとの融合を随所に感じさせるデザイン性
一方、メイン時刻の針合わせは4時位置のリュウズで行う。ストップセコンド仕様になっているので正確な針合わせが可能だ。ただし、日付を素早く修正する機能は備わっていない。日付を変える時はリュウズを巻いて、日車が動く11時(23時)から1時半まで時針を走らせなくてはならないのだ。リュウズはスムーズに動くものの、いちいち12時(24時)を通過させての日付修正は時間がかかってしまい面倒なのは否めない。
JLCおなじみのフォールディングバックルは、ケースと同様に完璧な研磨が施されている。見た目がいいばかりではなく非常にしっかりした作りで、かつ機能的だ。また、着用感は非常に快適。だがこのテストモデルに関しては、ストラップが我々テスト班のスタッフの手首にはいささか長すぎた。そのため横幅を広くとっているバックルが手首のこぶを頻繁に圧迫し、持て余し気味だった。もう少し短いストラップのほうがフィット感は増すように思われる。この革ストラップは皮革専門マニュファクチュールのブリッジ・オブ・ウィアー社製で、アストンマーティンのシートにもこのメーカーの革が使用されている。きめが細かくて、手触りもとても柔らかい。
ケースを裏返すと底面にはウィング付きのアストンマーティンのロゴがエングレービングされ、その脇には“1000 Hours Control”と刻印が施されている。AMVOX1も他のJLCモデルと同じく、この耐久試験にパスしたものが出荷されている証だ。
ちなみに、このモデルでは主動力のエネルギー蓄積は、ローターの回転による自動巻き方式を採っているが、アラームのほうはそれとは逆に手動で巻き上げなくてはならない。一見、統一性に欠けるようだが、このほうがアラーム音の継続時間を長くするのに好都合なのだ。
このモデルのエンジンともいうべき自社キャリバー918
さて、1000時間テストの信頼の厚さを物語るように、今回の我々のテストでも非常によい精度データが得られた。各ポジションを通しての最大日差は7秒。振り角の落ち込みも、平置状態と垂直状態のデータの差は小さな値に留まった。
このモデルのエンジンともいうべきムーブメントは自社キャリバーの918。キャリバー914をベースにしたこのムーブメントは94年に商品化され、マスター・レヴェイユやマスター・コンプレッサー・メモボックスにも搭載されている。自動巻きのローターにセラミックのボールベアリングを使用するなど、技術上の主な特徴はAMVOX1でも共通している。仕上がりも美しく、ブルースチールネジとコート・ド・ジュネーブ装飾に目を奪われる。かなり注意深く作業が進められたことがうかがえる出来だ。しかし細やかな仕上がりでありながら、すべてのパーツで面取りがなされ、磨かれているわけではないのが気にかかる。
しかしこれらの細かい点よりもっと注目すべきはやはりアラーム音を出す構造にある。このモデルではJLCの伝統的手法に則り、湾曲したバネが裏蓋の内側に仕込まれている。アラームを鳴らすこのバネの形状や素材の合金も、長年の研究の成果によるものなのだ。バネはケースの底面にネジで取り付けられていて、ローターの中心につながっている。そしてハンマーがこのバネを叩いてアラーム音を出す仕組みだ。ハンマーの駆動は、アラーム用の香箱からひとつの歯車を介して動力が伝達される方式で、この構造は他メーカーも採用しているものだ。

完璧に研磨されたフォールディングバックル。ここだけ見ても芸術的な価値がある。革の質感も非常に滑らか。孔の開いた反響板は1965年のポラリスを彷彿とさせる。アストンマーティンのエングレービング入り。
心地よいアラーム音が生活に彩りを与える
ハンマーのアームは小さな抑制バネで押さえられているため、歯車が素早く回るとツメがハンマーを前後に動かし、揺するような動きが起こる。その結果、鳴り響く音はきわめて心地よく、はっきり聞き取れるだけの音量を確保している。音質はひと昔前の電話を想わせ、16秒間鳴り続ける(訳者注:昔のドイツの電話機の音は日本のものよりもっと低音で、クリアなベルというよりブザーっぽい音色だった)。これなら、日中にすべきことを思い出したり、眠りの国から目覚めることも十分可能だ。
このモデルは作りに非常に手がかかっているだけに、価格も106万500円と安くはない。
しかし仕上げの良さと機能はやはり魅力的である。アラーム音の大きさ、継続時間の長さ、そして何よりも響きの良さはクルマの運転に疲れて眠った翌日に、爽やかな一日の始まりを告げるにふさわしい目覚ましとしても役立ってくれるはずだ。
個性豊かな新しいデザインと質の高い細やかな仕上がりは、それだけでも生活を美しく彩ってくれるが、お飾りではない実用的な機能は、クルマと同様に実際に使ってこそより大きな愉しみが感じられるだろう。
スペック
製造者:
ジャガー・ルクルト、Le Sentier/Switzerland
Ref.:
190 84 70
機能:
機能:時、分、秒(センターセコンド、ストップセコンド仕様)、日付表示、アラーム
ムーブメント:
JLC 918(自動巻き)、直径30.00mm、厚さ7.45mm、振動数2万8800/時、スムーステンプ、耐震軸受(キフ使用)、22石、パワーリザーブ約45時間、総パーツ数260点
ケース:
SS製、サファイアガラス風防(ドーム型)、スクリューバック、5気圧防水
ストラップとバックル:
カーフストラップ、SS製フォールディングバックル
精度安定試験:
(日差 秒/日、振り角)
文字盤上 +4
文字盤下 +5
3時上 +11
3時下 +5
3時左 +3
3時右 +9
最大日差 7
平均日差 6.2
平均振り角:
水平姿勢 284°
垂直姿勢 270°
サイズ:
直径:42.00mm、厚さ:15.00mm、総重量:99g
価格:
価格:106万500円
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。
記事掲載号
2006年7月号(No.005) 定期購読申込 バックナンバー常設店・掲載されている記事・画像・イラスト・動画などの無断転載を禁止します。
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