【スペックテスト】 ジラール・ペルゴ ロレアートEVO3

GIRARD-PERREGAUX
LAUREATO EVO3
名門スポーツウォッチメーカーの
新たなる決意
文:アレクサンダー・リンツ/写真:クリスティアン・シェルク/翻訳:市川章子
フェラーリとのコラボレーションを終了したジラール・ペルゴは、今や自身のアイデンティティをスポーツウォッチの分野に築き上げる時を迎えた。これからは自社のブランドロゴのみを前面に押し出しての展開となる。ロレアートEVO3は、今後の方向性を賭した重要な第一歩なのである。
○と×
○・デザインがツボを押さえていて魅惑的
・クロノグラフ針と60分積算計針がセンターに置かれている
・文字盤のコントラストがはっきりしている
・仕上げのクオリティが高い
×
・デュボア・デプラ製汎用モジュール使用のため、希少性にやや欠ける
クロノス評価
・ストラップとバックル(最高10ポイント)8pt.
・操作性(10)9pt.
・ケース(10)9pt.
・デザイン(15)13pt.
・視認性(5)5pt.
・装着性(10)10pt.
・ムーブメント(20)16pt.
・精度安定性(10)9pt.
・コストパフォーマンス(15)10pt.
合計85pt.
きめ細かなマニュファクチュールキャリバーとデュボア・デプラの汎用モジュールの融合。ビジュアルのみならず精度の良さも証明されたCal.GP033CO。
颯爽としたイタリアのスポーツカーを思わせる気品
ラ・ショー・ド・フォンからマスターピースを世に送り出すGPは、コレクター界では複雑モデルでその名を知られている。わけても技術的にとびっきり興味深く、ビジュアル的にも人目を引く“スリー・ゴールド・ブリッジ付トゥールビヨン”は、ここの自慢の一品だ。それに続くラインとしてはフェラーリウォッチが挙げられる。レーシングチームのために作られたモデルにも関わらずスポーティさは追求していないのだが、多くの人々の話題をさらった。文字盤上にいやでも目立つフェラーリのエンブレムと、たいていは奇抜な色使いの独特のディテールには、何かこう、凄みがあるのだ。
フェラーリにひけを取らない
GPのオーナーであり牽引車でもあるDr.ルイジ・マカルーソはイタリア人が熱狂するかの有名なチームの旗を手放し、今やブランド本来のアイデンティティをスポーツウォッチの分野に確立させるチャンスを迎えた。儲けの大きいこの分野ですでに名声あるGPとしては、競合がひしめき合っていてもここから抜けるわけにはいかないのだ。
我々クロノス編集部が思うに、“ロレアートEVO3”というネーミングはフェラーリの名に全くひけを取っていない。この名からは伝説的なレーシングチーム・ランチアの銘車“デルタ・インテグラーレ”のような、イタリアそのものといったエッセンスと健全な技術力を思い起こさせる。イタリア語の“ロレアート”とは博士や学士に対して一般的に使われている言葉で、本来「博士号/学位習得済」を意味する。
整頓された文字盤。抜群の視認性
ロレアートのデザイン上肝心なのは、クロノグラフ針と60分積算計の針をセンターに置くように開発した点だ。この決定により、文字盤は整頓され他の表示のスペースが生じ、何よりも抜群の視認性が実現した。同時に24時間積算計はインダイヤルに移され、残りのインダイヤルには当然のごとくスモールセコンドと12時間積算計が置かれ、そこへデイト表示が加わって全員集合といった按配。
全表示の背景となる暗色の文字盤はクル・ド・パリと呼ばれるギョーシェ仕上げが入れられ、夜光塗料スーパー・ルミノヴァで仕上げられた各ポジションの針とでコントラストをはっきりさせている。文字盤中心から伸びるクロノグラフ針と60分積算計の針は動きにぎこちないところもなく、針の先端がイエローでマーキングされているので、はっきりと分かり易い。針の長さはもうパーフェクト! クロノグラフとはこうでなくちゃいかんのだ! この2本の針が動くところをしばらく目で追っていると、今までなぜこういうクロノグラフがなかったのかと思うほどだ。
誤操作を回避できる使い勝手の良いプッシュボタン。一見レトロなプッシュボタンも実際は実用性が高く、優れた技術力がうかがえる。
正確な秒目盛がなければクロノグラフとはいえない?
我々テスト班が眼を向けたのは、作動中に正確な読み取りが可能かどうか、分針のポジショニングが及第かどうか、そして無論のこと今何時か分かるかどうかという点だった。クロノグラフ針はまさに期待通りに作動する。さっと目を走らせただけで、スタートボタンを押してから何分経過したかすぐに分かる。
ところで、タグホイヤーのジャック・W・ホイヤーといえば、ストップウォッチで一時代を築いた、同ブランドのアクティブな後継者だったことで知られているが、一度このように発言したことがある。「そもそも正確な秒目盛がなければクロノグラフとはいえない」。ホイヤー先生のお説ごもっとも。しかしながら、このテストウォッチに関しては例外といわせてもらいたい。ロレアートEVO3にはメインダイヤルに秒目盛がない。でなきゃ明快そのものの視認性は得られなかったのだ。
これは文字盤上をごちゃごちゃうるさい印象にしないために、あえてそのように選択したと受け止めたい。メインダイヤル上に4分割された位置に12時間表示の数字を収め、分の目盛がその外側、かつタキメーターの内側にある配置の妙には、畏怖の念さえ起こさせる。目盛を意識的に省略したタキメーターと分の目盛の設置に関しては、どちらを際立たせるか選択肢があっただろうと思われる。
好感の持てる外装のフィニッシュ
直径44mmのチタンケースにも大いに満足。5気圧防水で、加工にもぬかりなし。操作に必要なリュウズとふたつのプッシュボタンはいずれもねじ込み式。ベゼルの八角形部分はマット仕上げ、土台部分はポリッシュ仕上げでコンビネーションが美しい。このあたりのディテールはどれもよく考え抜かれていて、好感が持てる。続いて好感度が高いのは、通常の状態では外に飛び出ているプッシュボタン。操作が実にスムーズなのだ。これならうっかりリュウズのようにひねってしまうことも避けられる。
ここで時計を裏返してみよう。6箇所ビス留めされたサファイアガラスを通してキャリバー3300が現れる。ガラスの上には大きな字体で”LAUREATO EVO3”と書かれている。そして美観と品質の両面で完璧なカウチュ ラバーストラップにはバネ棒は使われず、ケース本体にビスで固定されている。フォールディングバックルの素材はSS。ケースとは異素材だが、表面は一見チタンと変わらないような色に仕上がっている。細部に愛情が注がれているこのモデルにしては、何故バックルもチタンにしなかったのか疑問だ。
クロノグラフ作動時にも変わらぬ精度
この時計のエンジンは自社開発の自動巻きキャリバー3300。ベースキャリバーの直径は11 1/2リーニュ、つまりは26mm。厚さは6.80mm。そこへデュボワ・デプラのモジュール2070が付加され、最終的には直径29.30mm。しかし厚さは6.80mmと変わらない。ローターは片方向回転式、振動数2万8800/h、スイス式レバー脱進機を搭載。香箱はシングルタイプでパワーリザーブは約42時間。
テストには精度チェックに電動式の検査器にもかけるのだが、フルに巻き上がった状態では平常時とクロノグラフ作動時にほとんど差が出なかった。テンプの振り角は当然ながら減少していくにも関わらず、こうなった。着用時のテストでも同様の結果を見せ、日差は一定して+3~4秒だった。
デュボワ・デプラのモジュールも、ここまでは完璧なまでの調和を見せているのだが、センターのクロノグラフ針は作動スタート時の瞬間は機敏に動かず、もたつきが目に付く。ベースキャリバーとモジュールをつなぐ歯車間には必要不可欠なあそび(隙間)があるが、これが故にクロノグラフスタート時のごく僅かな遅れは避けられないのだ。もっともこの難点は全てのモジュールクロノグラフに共通するもので、バルジューの7750番代とてこのあたりはクリアしきれていない。我々が思うに、このモデルに関しては、その点に留意して主要パーツの調整作業を行えば、作動は確実に向上するはずだ。並より高い価格ならば、こういうことも値段のうちに入っていてほしいものである!
フォールディングバックルは残念ながらチタンではなくステンレススチール製。仕上げの加工と使い勝手はそれなりに良い。カウチュ ラバーストラップは本体の時計によく合っている。
GPにとって新たな跳躍となるモデル
1975年に第一弾が発表されたロレアートは、このモデルによって「創作」をものにした。これはGPにとって必ずや新たな跳躍となろう。前述の問題点を除くと他には何も文句なし。まとめると、ロレアートEVO3は加工が良く、技術的にも興味深く、外観は当世風。それでいて落ち着きもあり、とどのつまり、GPはハデハデしさなくしても今後これで突き進んでいけるだろう。ドットーレ・ルイジ・マカルーソはこれ以降もこういうモデルでフェラーリとのコラボを早々に過去のものにしてしまうだろう。我々のような小うるさい奴等を相手にブランドイメージをさらに向上させるにあたっては、前途洋々である。
ジラール・ペルゴの時計にはジラール・ペルゴの名こそがふさわしい。これからは赤い旗と馬に引っ張られなくても、自力で走っていけるのである。
スペック
製造者:
ジラール・ペルゴ、Place Girardet 1, CH 2301 La Chaux-de-Fonds
Ref.:
80180-21-611-FK6A
機能:
時、分表示。スモールセコンド、12時間積算計、24時間積算計、ポインターデイト、(以上の4つはインダイヤル)。60分積算計、シングルハンドクロノグラフ針(以上のふたつはセンター)
ムーブメント:
Cal.GP 033CO *ベースキャリバー:ジラール・ペルゴ自動巻きCal.3300、直径26mm(11 1/2 リーニュ)、厚さ3.28mm、片方向回転式ローター、27石、スイス式レバー脱進機、グルシドゥアテンプ(フラットタイプ)、ニヴァロックス製ヒゲゼンマイ、振動数28800/h、緩急装置(マイクロメータースクリュー使用)、耐震軸受(キフ使用)、シングル香箱(パワーリザーブ約42時間±5%)。 *モジュール:デュボア・デプラ2070、直径29.30mm(13リーニュ)。ムーブメント全体では厚さ6.80mm、52石
ケース:
三段構造チタンケース、シースルーバック(サファイアガラス使用、6カ所ネジ留め)、リュウズ及びプッシュボタン(共にねじ込み式)、両面無反射コーティング風防(サファイアガラス使用)、5気圧防水
ストラップとバックル:
特製カウチュ ラバーストラップ、ステンレススチール製フォールディングバックル
精度テスト結果
(日差 秒/24時間、振り角)
通常時/クロノグラフ作動時
文字盤上 +5/+4
文字盤下 +4/0
3時右 +1/+3
3時左 +3/+1
3時上 +1/+3
3時下 +6/+5
最大日差 +5/+5
中間日差 +3/+3
中間振り角:
水平姿勢 325゜298゜
傾斜姿勢 287゜260゜
サイズ:
直径44mm、厚さ15.10mm、総重量95g
バリエーション:
チタンブレスレットタイプ
価格&問い合わせ
132万3000円(カウチュ ラバーストラップタイプ)、123万9000円(チタンブレスレットタイプ)*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事の抜粋です。
記事掲載号
2006年1月号(No.002) 定期購読申込 バックナンバー常設店・掲載されている記事・画像・イラスト・動画などの無断転載を禁止します。
・すべての著作権は株式会社シムサム・メディア、またはそれぞれの著作権者に帰属します。






