【スペックテスト】 ロレックス シードゥエラー4000

ROLEX SEA-DWELLER 4000
進化を続ける先駆者の威信。
文:イェンス・コッホ/写真:imagina/翻訳:市川章子
シードゥエラーは1954年に発表されたサブマリーナーの、プロ仕様のバリエーションとして1971年に登場した。ダイバーズウォッチにおいて今やクラシックとさえいえるシードゥエラーは、モダンな他社モデルに比べ、どのような差異を持つのか。
○と×:
○・元祖ダイバーズウォッチらしい質の高さ
・赤を差し色とした自社キャリバー
・横溢しているプロらしさ
×
・バックルがやや高級感に欠ける
クロノス評価:
・ストラップとバックル(最高10ポイント) 8pt
・操作性(5) 4pt
・ケース(10) 9pt
・デザイン(15) 15pt
・視認性(5) 5pt
・装着性(10) 9pt
・ムーブメント(20) 16pt
・精度安定性(10) 9pt
・コストパフォーマンス(15) 14pt
合計89pt.
高性能と誉高い自社キャリバー3135。精度の良さと耐久性の高さは、テンプ受けとブレゲヒゲゼンマイがものをいっている。
サブマリーナ姉妹の出来の良い末っ子
時計界のロングセラーモデルとして、ロレックスのサブマリーナーにかなうものはまずないだろう。サブマリーナーはあらゆるダイバーズウォッチのお手本にされてきた。それは、動物界で例えるならば海亀のようなものかもしれない。腕時計の初期時代から現在に至るまで、悠久の時を超え化石のごとく存在している。デザインも50年来、基本的に変わらぬままである。
そのサブマリーナーの一番末の妹として登場したのがシードゥエラーだ(訳者注:ドイツ語では時計は女性名詞)。“海に住む者”という意味を持つこのモデルは、サブマリーナーとはデイト表示が異なりサイクロップレンズが付いていない。ロレックスのデイト表示付きモデルの中で、拡大レンズがないのはこれだけだ。シードゥエラーのトピックスは、サブマリーナーとは比較にならないほどの高い防水性だが、それよりも単に拡大レンズのないもの珍しさからこのモデルを選ぶ人もいるだろう。しかし、拡大レンズが搭載されていないのは、非常に深く潜水したときにかかってくる、とてつもない水圧にも耐えるための配慮なのである。
サブマリーナよりも2mm厚い、1220m防水ケース
ヘリウムガス排出バルブを装備し、主艦部をサブマリーナーよりも2mm厚く装甲しているシードゥエラーがデビューしたのは1971年である。当時は2000フィート深水のダイバーズウォッチとして登場した。そして1980年には2倍深く潜れる4000フィート、つまり1220m深水にバージョンアップ。300m深水止まりの、お姉さん格ウォッチであるサブマリーナーに4倍もの差をつけたのである。
そもそも、ロレックスの歴史は防水性とは切り離せない関係にある。まず、ねじ込み式リュウズを採用した初の防水ケースは、1926年に同社から登場している。さらに、翌年には各メディア協賛のドーバー海峡横断遠泳の際、スイマーに防水ケースのオイスターを着用させて大成功を収めた。1954年当時、サブマリーナーは世界初の回転ベゼル付きダイバーズウォッチとして注目を集めた。
ヘリウムガス排出バルブは、カプセル内蔵式とは異なる仕組みを採用する。デイト部分の風防は、サイクロップレンズ(拡大鏡)になっていない。高い水圧にも耐えるため、このような構造となっているのだ。
「余剰物質を外へ出す」ダイバーズウオッチの進化
そして1967年からはフランスの潜水探査専門企業コメックスと共同開発したヘリウムガス排出バルブを搭載、これは後に発売されたシードゥエラーにも装備された。海亀の体には体内の余剰な塩分を排出する塩類細胞という組織があり、太古からの進化の過程でこれが発達したが、ダイバーズウォッチも「余剰物質を外へ出す」という同様な進化をたどったのは興味深いところだ。シードゥエラーは長い間、比類なきプロフェッショナルダイバーズウォッチとして君臨してきた。
その外観はさながら海中を舞う亀のごとき気品が漂い、中身は奥ゆかしく白黒でまとめられた装甲ボディにより、あらゆる危険から護られている。そしてやはり海亀と同じく水陸両棲。このモデルの進化はさすがに生物の進化ほどは時間がかかっていないが、それでもかなりゆったりしたテンポで歩み続けている。長い年月を越えてもなお変わらぬスタイルが、ロレックスの人気のキーポイントであることは間違いないだろう。
不変のスタイルをキープしつつ、各部をアップデート
しかしことさら大きく話題にはならないものの、不変のスタイルをキープしつつも主要部分は絶えず改良が進められてきた。シードゥエラーについていえば、近年は技術的な質の高さのみならず、時計全体の気品がどんどん向上している点に注目したい。文字盤の夜光インデックスはホワイトゴールドで縁取りされ、ベゼル上の夜光ドットはガラスでガードされるようになった。また、“壊れない”といわれる従来のドーム型プラスチック風防は、フラットで傷に強いサファイアガラスに替えられている。
そうこうしているうちに、ケース側面だけではなくブレスレットの側面まで鏡面仕上げになった。併せて、この2~3年でブレスレットのエンドピースも改良されマッシブになった。ロレックスのファンがいうところのSEL(ソリッドエンドリンクス)というものだ。今回の最新モデルではラグに手が加えられたのがポイントだろう。バネ棒の通し穴を貫通させていないため、気品がより高められている。
高い評価の自動巻キャリバー3135
さらに、今までよりも長い潜水が可能になったのは、ブレスレットが改良されたことも一因である。留め具の端に被せてロックするパーツが加わり、不意に開くことなくしっかり固定されるようになっている。もちろん、スチールとガラスの甲羅の下も着実に進化してきた。1989年以降、シードゥエラーの内部では、赤くアルマイト加工されたおなじみの自動巻きキャリバー3135が動いている。
多くの時計師から最良の構造と高く評価されているムーブメントだ。キャリバー3135はムーブメントのサイズ、テンプ受け、ブレゲヒゲゼンマイ、マスロットリングによるテンプの歩度調整システムなど、丁寧な作りが随所に見られるが、これらはどれも長年の精度維持に文字どおり役立っている。そして快適な使用感は、ストップセコンドや日付が瞬時に切り替わる構造にも支えられていることを、見過ごすわけにはいかない。
バックルの止め具は、非常に機能的な構造を持っている。しかしながら、高級感という意味ではやや物足りない。
ブレスレットのさらなる進化に期待
それではシードゥエラーはダイバーズウォッチとして完璧といいきれるかというと、より良く成長したこのモデルにも少々の批判点はある。まず、風防のサファイアクリスタルガラスが厚い。フラットに埋め込まれた時計と比べると高さが出ているため、サイドからの衝撃があった場合は危険度が増してしまう。
さらに、テストウォッチではベゼルが非常に堅かった。外観面については、ブレスレットのロック式留め具が全体とのバランスを乱しているのが惜しい。より確実ではあるし、ロックされている状態がひと目で分かるのはいいのだが、高級感という観点からすると、やや残念だ。ロレックスは6年前からデイトナに、全面均一にフライス加工されたオイスターのロック式ブレスレットを使用している。それを考えると、シードゥエラーのブレスレットもさらなる向上は可能であろう。次なる進化はそこに表れるのかもしれない。
機能性とデザイン性の高さはロングランモデルの実力
ところで、シードゥエラーは街で着るスーツと海で着るウェットスーツのどちらが本当に似合うのだろうか? 気になる疑問だがこれは愚問であろう。なぜならば、水陸両用のこのモデルは街中でも海中でもよく映える。細かいことをいうと、ブレスレットの留め具部分だけはビシッとキメたジェントルマンには合わないかもしれない。中身の価値の高さについては自社開発の機構が証明済みだ。現行の数多くのダイバーズウォッチにはクラシカルな正統派タイプもモダンな現代的タイプもあるが、そのあたりは好みの問題となってくる。
新型シードゥエラーは、機能性とデザイン性の高さでは、やはりロングランモデルらしい実力が表れている。しかし現在、それぞれの個性を打ち出すことにしのぎを削っている他のブランドが、今後どういう切り札で勝負に出てくるか、予想はつかないのが現状だ。ダイバーズウォッチをめぐるポーカーゲームは、まさに水面下で続いているのである。
スペック
製造者:
ロレックス、Geneve / Switzerland
Ref.:
16600
機能:
時、分、秒(センター式、ストップセコンド)、日付表示(クイックチェンジ式)
ムーブメント:
Cal.3135(自動巻き)、直径28.50mm、厚さ6.00mm、振動数2万8800/時、テンプ受け、耐震軸受(キフ使用)、ブレゲヒゲゼンマイ、マイクロステラスクリュー式歩度調整システム、31石、総パーツ225個、パワーリザーブ約55時間、公式クロノメーター(COSC認定)
ケース:
ステンレススチールケース、ねじ込み式リュウズ、サファイアガラス風防、シースルーバック(ねじ込み式。サファイアガラス使用)、片方向回転ベゼル、ヘリウムガス排出バルブ、122気圧防水
ストラップと尾錠:
共にステンレススチール製。ブレスレットのエンドピースはインターチェンジャブル式。バックルはロック可能。
精度テスト結果
(日差 秒/24時間、振り角)
文字盤上 +5
文字盤下 +5
3時上 +4
3時下 +4
3時左 +6
3時右 +1
最大日差 5
中間日差 +4.2
中間振り角:
水平姿勢 290゜
垂直姿勢 262゜
サイズ:
直径40.00mm、厚さ15.00mm、総重量143g
価格&問い合わせ
52万5000円
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事の抜粋です。
記事掲載号
2006年3月号(No.003) 定期購読申込 バックナンバー常設店・掲載されている記事・画像・イラスト・動画などの無断転載を禁止します。
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