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Chronos日本版

【第2特集】 2008年5月号(No.016)クチュリエにとっての「機械式」とは?

クチュリエにとっての「機械式」とは?

クチュリエにとっての
「機械式」とは?

吉江正倫:写真/鈴木裕之(本誌):文

ハイファッションやハイジュエリーに軸足を置くクチュリエにとって、自社のタイムピースに「機械式」を搭載することは、求められる絶対条件ではない。それにも係わらずコレクションの心臓部に「機械式」を選ぶメゾンは極めて多い。クォリティコントロールの厳格化によって、時計専業のエタブリスールに比肩する実力を身に付け始めたクチュリエたち。彼らにとっての「機械式」とは何か? そして彼らはどこに向かおうとしているのか?

 ブルガリグループのCEO、フランチェスコ・トラーパニ氏の言によれば、日本は「ラグジュアリー業界における最も戦略的な市場」なのだという。現在、東京・銀座2丁目の交差点を取り囲むように、カルティエ、ブルガリ、シャネル、ルイ・ヴィトンのブティックが軒を連ねているが、いつの頃からか、こうした「ラグジュアリー業界」を牽引するクチュリエのショーケースに、機械式のムーブメントを搭載したタイムピースが、当たり前のように並ぶようになった。ハイジュエリーやハイファッションに軸足を置くこうしたラグジュアリー・メゾン(適当な表現が見つからないので、この特集ではこう呼ばせていただく。要するに時計専業のメゾンではない、という意味だ)にとって、ムーブメントが機械式であることは、要求される絶対条件ではないはずだ。それにも係わらず、現在では多くのラグジュアリー・メゾンが、そのラインナップの、しかも中核となるコレクションに機械式のムーブメントを選択している。
 ラグジュアリー・メゾンのクチュリエたちにとって「機械式」とはいったいどういう意味を持つのか?
 こうしたテーマに立ってみると、先頃発表されたシャネルのJ12 キャリバー 3125は大きな事件だったことが分かる。詳細は76ページ~に詳しいが、これはラグジュアリー・メゾンのトップが、機械式のムーブメントを明確に「宝石と同義」と位置付けた初の例だったからである。

「古典回帰」によって復活を遂げた高級機械式キャリバー

 今日、機械式ムーブメントを自社のタイムピースに搭載するラグジュアリー・メゾンは枚挙に遑がないが、その中でもカルティエだけは、区別して語らなければならないだろう。この「王の宝石商」は、1904年という腕時計の黎明期から、時計作りを行ってきた歴史を持ち、クォーツ環境以降に腕時計製造に着手した多くのメゾンとは、一線を画するからだ。この世界に機械式しかムーブメントの形式が存在しなかった時代には、ルクルトやEWCなどの手巻きムーブメントを好んだが、これが80年代に入ると顕著にクォーツムーブメントの比率が増えてくる。時代時代に見合った「一流品」であることは搭載ムーブメントの絶対条件だったにしても、それが機械式でなければならない理由は存在しなかったはずだ。作動原理がゼンマイと調速・脱進機であっても、また電池であっても、カルティエ本来のアイデンティティは、決して揺らぐことはなかったからだ。
 こうした状況が一変するのは、1998年からスタートを切った「コレクション プリヴェ カルティエ パリ(以下CPCP)」からだろう。

つづきは『クロノス日本版』2008年5月号(No.016)でお楽しみ下さい。

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