【第1特集】 2007年3月号(No.009) クロノメーターのパフォーマンス

クロノメーターのパフォーマンス
『クロノス日本版』初の独自テスト
隈田一郎、奥田高文:写真/菅原 茂、名畑政治、篠田哲生、広田雅将、クロノス日本版編集部:取材・文
「高精度」とほぼ同義にあるクロノメーター。2006年度に117万4227個のクロノメーターを認定したC.O.S.C.はその象徴である。日常での精度は使用するオーナーによって異なるが、出荷時のファイナルコントロールを経てわが国に輸入されるのは厳然たる事実だ。C.O.S.C.もしくは自社でC.O.S.C.の規定に準拠したテストを実施しているメゾンから10本のクロノメーターを抽出して『クロノス日本版』初の独自テストを実施した。

TAG HEUER
CARRERA CALIBRE360 LIMITED EDITION
タグ・ホイヤー カレラ キャリバー360 ホワイトゴールド限定モデル 189万円※価格は記事掲載時のものです
画期的なダブルムーブメント
機械式時計で100分の1秒計測。こんな前代未聞のクロノグラフを手掛けるにあたり、タグ・ホイヤーは既存のムーブメントにクロノグラフ用のムーブメントを重ね合わせるという柔軟な発想を選択した。これは非常に秀逸な判断だろう。キャリバーの新規開発に伴う小売価格の上昇を抑え、手頃な〝世界初〟を実現したのだから。SSモデルで80万円を下回る価格は、驚異的な計測能力を有する機械式クロノグラフとしては、ずいぶん良識的である。特に昨今の、機能の複雑化とそれに伴う価格上昇の潮流を考えればなおさらだ。そしてまた、この選択は精度の面からも理にかなっている。キャリバー360は自動巻きの汎用ムーブメントとして信頼性の高いETA2892 A2で時・分・秒、それとカレンダーモジュールといった時計の基本的な機能を動かしている。一方、クロノグラフの駆動は手巻きの自社ムーブメントが司る。つまり分業制というわけだ。これにより、クロノグラフ駆動によるトルクの分散を抑え、時刻表示用ムーブメントのテンプの振り角を一定に保つことができる。その逆もしかり。独立した専用の香箱を持つからこそ、クロノグラフはしっかりと時間を計測することができるのだ。
今回テスト用にお借りした「キャリバー360」は、日本市場に数本しか入荷予定のない18KWGモデル。ズシリと重いこの時計を腕にはめる前に、エムヴイで機械的に計測していただいた数値に目を通す。気になるのは最大日差の+11秒くらいだが、最小日差が+8秒なので、その差は3秒。これは優秀な数値だろう。進み寄りの調整をちょっと戻すことで、より一層の正確さが期待できる。フル巻き上げ時の振り角も5姿勢でよく振れており、歩度計測の結果も、日差の結果と同じく最大と最小の差が少ない。非常に〝安定している〟印象である。
クロノグラフによる影響は確認されず
師走も押し迫った2006年12月29日、15時過ぎに腕に装着して着用テストを開始した。直径41㎜は当世の腕時計としてはもはや違和感を感じないが、ふたつのムーブメントを納めたケースは厚さが15・80㎜と存在感抜群。さらに素材が18KWGということもあり、かなり重量がある。この日は帰省のため夜から2時間ほどクルマを運転したが、運転中の衝撃やステアリングから伝わってくる微振動が、精度に悪影響を及ぼさないものかと少し気がかりだった。しかし、郷里にたどり着いた23時前、1回目の計測をしたところ日差は+2秒とかなり優秀な数値が出た。計測開始から約8時間後。フルに巻き上げた状態から始めているので、テンプの振り角は落ちていないと思われる。2日目と3日目は、基本的には腕にずっと装着しつつ、クロノグラフを頻繁に使ってみた。キャリバー360の一番のトピックスである100分の1秒カウンターは、見ているだけで楽しい動き。加えて、〝チクタク〟を通り越した、36万振動の〝ジー〟という刻音も面白い。滑らかに動くクロノグラフ秒針など、時計全体が丁寧に作り込まれているのがよく分かる。日差は+9秒とやや開いたが、まだ歩度測定器で計測した範囲内に収まっている。これは確実に「分業制」の恩恵だ。
一気に進みが出たのは4、5日目。特に5日目は日差が+18秒と大きく開いた。実はこの期間は時計を腕から外して平置きにしていたのである(文字盤上)。巻き上げは時刻確認時にするのみだったので、これはリザーブが少なくなり、テンプの振り角が落ちた結果と思われる。測定器のテスト結果でも、振り角が落ちて進み傾向になるのは確認されている。6日目から10日目までは腕に着けたり外したりを繰り返してみた。振り角の落ち=進みが気になったので、腕から外した時も意識的に手で巻き上げてみた。結果としては、日差は+7~13秒の間に収まっていた。やはりテンプの振り角が落ちていない状態では、日差も安定しているようだ。
結果を言えば、10日間の最小日差と最大日差の差が16秒、10日間の平均日差は+10秒とやや開いてしまった。しかし、これは1日目の8時間後の計測があったから。実際、2日目から10日目で見ると、最小と最大の日差の差は11秒で、進み傾向ではあるものの、驚くほどのばらつきはない。10日間「キャリバー360」と付き合っただけだが、クロノグラフ駆動による日差への影響は確認されず、また自動巻きであることを考えると、日常使いにはピッタリのモデルだ。言うなれば〝いつも身に着けていれば、誠意を示してくれるかわいいヤツ〟といった感じだろうか。(生形勝喜‥本誌)
独自精度テストを実施した時計
●タグ・ホイヤー
カレラ キャリバー360
ホワイトゴールド限定モデル 189万円
●パネライ
ルミノールサブマーシブル44㎜ 55万6500円
●ブライトリング
クロノマット エボリューション 45万6750円
●ロレックス
オイスターパーペチュアル シードゥエラー 52万5000円
●ユリス・ナルダン
マキシ マリーン クロノメーター 80万8500円
●シャネル
J12クロノグラフ 74万5500円
●エベル
1911ジェント 37万8000円
●ジャン・メレ&ギルマン
クロノスポーツ 147万円
●A.ランゲ&ゾーネ
リヒャルト・ランゲ 225万7500円
●ジャガー・ルクルト
レベルソ・グランドGMT 134万4000円
つづきは『クロノス日本版』2007年3月号(No.009)でお楽しみ下さい。
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