【第1特集】 2006年9月号(No.006) 新作ムーブメント2006
新作ムーブメント2006
革新性に秘められた開発者の魂
奥山栄一、松永 学、古浦敏行:写真/広田雅将:取材・文
今年なぜ、個性的な新作が増えたのだろう。人々が言うマーケットの変化か、あるいは市場が飽和したためか。編集部が現地取材で見たのは、門外漢のそんな憶測を吹き飛ばすほどの、作り手たちの強くてひたむきな情熱であった。

ダトグラフ・パーペチュアル
「ダトグラフ」に永久カレンダーを搭載したモデル。トルクのロスが少ない永久カレンダー機構と自由振動ヒゲが、この複雑時計にかつてない高精度を与えた。上は文字盤側のメカニズム。アウトサイズデイトと、隙間を縫うように配置されたコンパクトな永久カレンダーに注目。手巻き(Cal.L952.1)。Pt(直径41㎜×厚さ13.5㎜)。1556万1000円(価格は記事掲載時のものです)。超高精度こそ、ザクセンの伝統
かつて故ギュンター・ブリュームラインのインタビューを読んだことがある。なぜ「A.ランゲ&ゾーネは、精度が出る自由振動ヒゲを使わないのか」という問いに対して、彼は「ルックスが良くない」と回答したことを覚えている。今年、A.ランゲ&ゾーネがふたつの新作「ダトグラフ・パーペチュアル」と「リヒャルト・ランゲ」をリリースした。興味深いことに、この2本は高精度の象徴である自由振動ヒゲを載せている。ダトグラフ・パーペチュアルは、名キャリバーL951・1に、永久カレンダーとムーンフェイズを加えたモデルだ。機構が増えると精度は落ちるが、A.ランゲ&ゾーネは自由振動ヒゲなどを採用し、多機能と高精度を見事に両立させた。「ダトグラフ」のリリース時に、筆者は「ゼンマイのトルクが大きいからロービートを選んだ」という話を読んだ。大きなトルクはクロノグラフを動かすのみならず、今年、永久カレンダーを加えることを可能にした。のみならず、大きなトルクは、ダトグラフに大ぶりなテンプと高い振り角を与えることを可能にした。振り角が大きいほど精度はよりいっそう安定する。ダトグラフが優れた精度を持つのも理由があったわけだ。
加えてダトグラフとダブルスプリットには優れた特長がある。香箱に備えられた「巻き止め」機構である。これは、ゼンマイの巻き過ぎと解け過ぎを制限するメカニズムだ。かつての懐中時計は例外として、現行機で載せた例は稀だろう。ゼンマイのトルクは、巻き切った状態が一番強く、ほどけるにしたがって下がる。トルクが下がるとテンプの振り角は落ち、精度に悪影響を及ぼす。本誌でもお馴染みのアントニー・デ・ハス氏は「ダトグラフやダブルスプリットは、理論上は約55~60時間という長いパワーリザーブを持っているが、巻き止めを使って短くした。トルクが安定している部分を使い、テンプの振り角を落とさないためだ」と述べる。パワーリザーブは短くなるが、精度は大きく改善される。
このダトグラフをベースに生まれたのが、ダトグラフ・パーペチュアルである。特長は負荷が小さく、精度に影響の出にくい永久カレンダーにある。一般的に複雑な機構は抵抗が大きく、テンプの振り角を下げる。しかし、デ・ハス氏は「カレンダーモジュールが適切に設計されていれば問題はない」と語る。開発者のイェンス・シュナイダー氏がカレンダーを操作してくれという。リュウズを回してカレンダーを切り替えると、操作は驚くほど軽い。「カレンダーの切り替えに必要な時間は約2時間。振り角は10度程度しか落ちない」と彼は説明する。
掲載時計
●A.ランゲ&ゾーネ
●オーデマ ピゲ
●ジャガー・ルクルト
●ブルガリ
●H.モーザー
●ヴォウティライネン
●ロジェ・デュブイ
●モーリス・ラクロア
●グラスヒュッテ・オリジナル
●フレデリック・コンスタント
●ピエール ドゥ ロッシュ
●クレドール
つづきは『クロノス日本版』2006年9月号(No.006)でお楽しみ下さい。
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