【第1特集】 2006年5月号(No.004) クロノグラフ、時を描き出す精密機械。

クロノグラフ、
時を描き出す精密機械。
Contemporary, highly-evolved chronographs
古浦敏行、隈田一郎、水野愛子:写真名畑政治、髙木教雄、広田雅将、鈴木幸也(本誌)、鈴木裕之(本誌):取材・文
時は今まさに新型クロノグラフ百花繚乱の時代である。最も身近な複雑機構が多彩になるのは嬉しいことだが、半面、次世代へと向かうメカニカル・トレンドは曖昧になったとも言える。腕時計型黒のぐらづは如何に生まれ、何処へ行くのか?時代性を反映させた精密機械の現在、過去、そして未来を描く。

パテック フィリップも垂直クラッチを採用した。スタートボタンを押すと、スタート/ストップレバーがコラムホイールを回転させ、クランプが開いてクラッチがつながる。四番車の動力がクロノグラフ秒針に伝えられ、積算が開始される。
2006年クロノグラフ・ムーブメント最新動向
時代は移り行くものである。だから最新のクロノグラフを語るにあたって、少しだけ過去を振り返ってみよう。1967年、クロノグラフを取り巻く状況は恵まれてはいなかった。既存モデルのブラッシュアップは経費が高くつき、売上は停滞していた。これを打破しにかかったのがクロノグラフのトップブランド各社だった。ウィリー・ブライトリングとジャック・W・ホイヤーは数社のメーカーと共同して「クロノグラフ委員会」を編成し、自動巻きクロノグラフの開発に着手した。クロノグラフは手巻きで当然だったこの時代には、誰もが自動巻きクロノグラフの出現を望んでいるというわけではなかったが、新風を吹き込むには恰好の題材だったのである。ともあれこの開発委員会とは別に、ゼニスの技術者たちも黙々と作業を進め、同様に日本ではセイコーが追加装備機能の実現に向けて腐心していた。そしてその2年後には、この3つの開発チームからそれぞれ独自の製品が完成したのだった。この顛末の詳しい内容についてはいずれ号を改めて解説したいと思う。
時は変わって2006年の現在、クロノグラフは人気が高く、誰もが好む話題となっている。今や自動巻きクロノグラフをラインナップから外しているメーカーは、ごく数社にすぎない。しばらくクラシックスタイルのクロノグラフキャリバーには特にどうという展開は見られなかったのだが、この2、3年は強引なまでの勢いで変化してきている。多くのメーカーの開発部門では技術者たちが新型キャリバーに熱中して取り組んでいるようだ。
それぞれの戦略
各社の戦略にはさまざまな違いがある。カルティエ(THA)、ロジェ・デュブイ、グラスヒュッテ・オリジナル、A.ランゲ&ゾーネ、モーリス・ラクロアが主にクラシカルな手巻きキャリバーの更新に励んでいる間に、フランク・ミュラー、フレデリック・ピゲ、ジャガー・ルクルト、パテック フィリップ、ロレックス、ゼニスは自動巻き機構を組み込んだ構造を主軸にして、研究に余念がない。ブレゲのお抱えサプライヤーであるヌーベル・レマニアは、この両方のフィールドに進んでいる。一方、デュボア・デプラ、クロノスイス、ジラール・ペルゴ、そして恐らくパルミジャーニ・フルリエもモジュールと格闘するのではなく、既存ムーブメントの文字盤側に切替機構のワンフロアを設ける方策で進んでいるようだ。ショパール、IWC、パネライがどの方向に舵を取っているのか、今のところ明らかではない。しかし想像するに、ショパールからは自社開発キャリバーとして自動巻きが今年発表になるのではないだろうか。IWCの新型自動巻きクロノグラフは2007年に登場すると思われる。
パネライはその間に独自の8日巻きをベースにした手巻きクロノグラフを準備しているようだ。3日巻きムーブメントも登場が待たれるが、これがベースの手巻きを8日巻きと同時に発表するか、別々に発表するかは目下のところは不明だ。以上が今後の展望だが、次にA.ランゲ&ゾーネ、モーリス・ラクロア、パテック フィリップの最新作に話を移そう。この3社は新型モデルで今までの雰囲気とは違った発達ぶりを見せ、強豪各メーカーとの勝負に出ているのだ。
つづきは『クロノス日本版』2006年5月号(No.004)でお楽しみ下さい。
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