【第1特集】 2007年11月号(No.013)創刊2周年記念特集

時計産業を震撼させた10大革命
10MAJOR REVOLUTIONS that shook the WATCH INDUSTRY
古浦敏行、奥田高文、吉江正倫:写真
小牧昭一郎、広田雅将、飛田直哉、ベルナルド・チョン、クロノス日本版編集部:取材・文 山田五郎:取材協力
1.機械式時計の可能性を拓いたエポックピーシズ……P48
2.CAD/CAMと放電加工機の普及……P52
3.同軸脱進機(コーアクシャル・エスケープメント)……P56
4.特殊素材の流通・加工の急速な民生化……P60
5.時計価格の変遷……P62
6.ジェラルド・ジェンタとその方法論……P64
7.独立時計師の出現と躍進……P66
8.ギュンター・ブリュームライン……P70
9.日本メーカーの30年……P74
10.1970年代以降、30年の“腕時計コマーシャリズム”の変遷……P78
時計産業の変節を促した革命の萌芽
本特集のタイトルはアメリカ人ジャーナリスト、ジョン・リードの筆になるロシア革命のルポルタージュ『世界をゆるがした10日間』から着想を得たものであることを、まずはお断りしておこう。ウォーレン・ベイティ製作・脚本・監督・主演の長編大作『レッズ』(1981)の原作といえば、お分かりいただけるだろうか。扇動的なこのタイトルは、僕の頭の片隅にずっとあって、いつか使ってみたいと思っていた。
革命。何と前時代的な言葉だろうか。コミュニズムのイデオロギーが崩壊した今となっては、革命はテロやクーデターと同義語の、禍々しい暴力沙汰的な意味合いを強く帯びるようになってしまった。だから、例えば時計メーカーが新機構を発表したとしても、革命的メカニズムとは言わず、革新的メカニズムと呼ぶのもさもありなんである。しかし、革新(Evolution)は歴史にその名を刻み込まんとする気概に欠ける。要するにマーケティング戦略におけるアドバンテージを得るための方策。そこにはドクドクとたぎるあたたかな血は流れておらず、したがって時計産業を突き動かし、刷新するだけの力はない。
歴史にその業績を刻むだけの波動は、革命(Revolution)からしか生まれ得ない。
1970年代から2007年まで。また随分と中途半端なワンジェネレーションを定義したなと笑われるかもしれない。しかし、この30数年の間には、時計産業および市場を根底から覆したクォーツ・クライシスとそこから生まれた腕時計のマスプロダクション化から始まり、その揺り返しとしての機械式時計の再評価と極細分化、巨大資本によるメーカーやサプライヤーの苛烈を極めた買収合戦、設計と製造設備の驚異的な進化、共産主義の崩壊やユーロの統合、中国やインドを筆頭とする新興経済国の躍進によるワールドワイドな市場の再編など、ありとあらゆる事象がめまぐるしく起こった。わずか40年足らずで時計産業を取り巻く環境は驚くほど大きく変化したのだ。
当然、そこには時計産業の変節を促した「革命」の萌芽がいくつか存在するはず。『クロノス日本版』はその断片を少しでも抽出することによって、時計産業の「今」を浮かび上がらせたいと考えた。
この特集で私たちが選んだ10大革命は、むろん、独断と偏見による。包括的にまとめあげたかったので、特定のメーカーやプロダクトは候補から除外した。もちろん、私たちの選択に異論、反論が集中することは覚悟のうえである。支離滅裂なテーマの選び方かもしれないが、そこには必ず「手放しで賞賛することはできない疑問符」が一貫して流れていることをご理解いただきたい。まだ数十年に満たない事象だ。本当の「革命」だったか否かは、後世の時計史家、メーカー、そしてエンドユーザーが判断すればいいし、私たちはその立場にはまだ置かれていない。例えば、レバー脱進機の発明は真に革命的だったと胸を張って断言できるが、コーアクシャル脱進機が今後の時計産業を大きく揺さぶるだけの力を持つかどうかは、まだ誰にも分からないのだから……。
何はともあれ、あとは個々人の主観に委ねたい。そして読者諸賢が読了後、自分なりの10大革命を考えるきっかけになれば、この大仰なタイトルの特集はそのミッションを完遂したといえるだろう。
つづきは『クロノス日本版』2007年11月号(No.013)でお楽しみ下さい。
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