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Chronos日本版

【スペシャルコンテンツ】 クエルボ・イ・ソブリノス Vol.1

クエルボ・イ・ソブリス
リード

吉江正倫:写真 生形勝喜(本誌):取材・文
Photographs by Masanori Yoshie Text by Masaki Ubukata(Chronos-Japan)

125年で積み重ねた美意識という財産

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過ぎし日のハバナの街並み。重厚な建築物はヨーロッパ、特にスペインの影響が強い。ハバナの旧市街に保存されているスペイン・コロニアル様式の建築物は現在、世界遺産に登録されている。

 多くの時計愛好家にとって〝ハバナ〟とは耳慣れない地名だろう。スイスでもフランスでも、イギリスでもない中米の島国キューバが過去において、時計と関連したことはほとんどない。しかし今、時計業界ではその首都のハバナという地名を耳にする機会が増えた。それは同地の高級時計宝飾商を源流とする時計ブランド「クエルボ・イ・ソブリノス」が人気を博してきた証だ。

 今年で創業125周年を数えるこの時計宝飾商は、ハバナの発展とともに歩み、その勢いを増した超高級ブティックである。その隆盛はかつてパテック フィリップやロレックスなどのショップウォッチを扱っていたことや、ヨーロッパ各地に支店を出していたこと、また、その顧客にウィンストン・チャーチルやアーネスト・ヘミングウェイといった多くの著名人を抱えていたことからも推し量れるだろう。そして現在、しばしの休眠を経て復活したクエルボ・イ・ソブリノスは、時計愛好家の熱い視線を集めている。最大の魅力はなんといっても独特の存在感であるが、そのデザインの源泉はどこにあるのか。それを探るには、少しだけハバナの歴史を知る必要がある。

 1492年、コロンブスによって発見され、スペインの植民地となったキューバ島は1607年にハバナを首府と決めたが、南北アメリカおよび、ヨーロッパと中米を結ぶ重要な航路に位置するこの港町が、自由貿易の中継基地として大いに発展していった経緯は想像に難くなく、19世紀の初めには葉巻の通商と砂糖生産によって莫大な富を得るに至った。その後、スペインからの独立を遂げたキューバは、1920年代に米国で禁酒法が施行されると、それを逃れようとするアメリカ人富豪を受け入れるリゾート地として人気を博すようになる。

 想像を逞しくするならば、こうした歴史的背景を持つハバナという土地は、実は時計と無関係ではないのかもしれない。大航海時代には船に積まれたマリンクロノメーターとともに冒険者が、貿易港として栄え始めた頃にはポケットウォッチを携行したヨーロッパからの渡航者が、そして20世紀になってからは腕に時計を着けた洒落者のアメリカ人が、ハバナを訪れた。それらが直接、同地の高級時計宝飾店であるクエルボ・イ・ソブリノスにどのような薫陶を与えたのかは定かではない。

 しかし、このブランドの特徴であるクラシカルで端整なケース形状は、まさにヨーロッパの伝統手法だ。一方で、洒落た文字盤のあしらい方や独特の色使いには、型に嵌らない、自由で奔放なアメリカのモダニズムを感じてならない。

 実際のところ、デザインの源泉がどこにあるのか、それは想像の域を出ない。しかしながら、現在の時計業界において、クエルボ・イ・ソブリノスが一種独特の美意識を持っていることは確かであるし、それが時計愛好家の心を掴んでいるのも事実だ。
 ブランド創設から125年、休眠から目覚めて5年が経過したクエルボ・イ・ソブリノス。今後、その造形・意匠がどのように練り込まれてゆくのか、まだまだ目は離せないのである。

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クエルボ・イ・ソブリノスが展開していた、過去のポスター。写真はプロミネンテのデュアルタイム。意匠は現在とほぼ同じだ。

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今年、スペイン・マドリード市の競馬場で開催された125 周年記念パーティの様子。ドレスアップした多数の紳士淑女は、現在のクエルボ・イ・ソブリノスの顧客だという。

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ハバナを象徴する葉巻。その葉巻を入れるケースが「ヒュミドール」だが、クエルボ・イ・ソブリノスの製品を買うと、このヒュミドールが時計ケースとして付属してくる。美しい木製ケースには湿度計が搭載されている。

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アニバーサリーイヤー・モデルである「ロブスト トリプルカレンダームーンフェイズ クロノグラフ125周年記念モデル」のローター。クエルボ・イ・ソブリノスはトランスパレントされたケースバックを持つモデルが多いが、“125 ANIVERSARIO”と刻印されるのは今年発表された新作のみである。



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ハバナを象徴する葉巻を保存するケースがヒュミドールです。クエルボ・イ・ソブリノスでは、ヒュミドールを模して湿度計が搭載されたオリジナル時計ケースを作りました(非売品)。
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 ムラキ クエルボ・イ・ソブリノス tel. 03-3273-0321