【スペシャルコンテンツ】 未来を創造するセイコーの技術遺産 Vol.2


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61ファイブスポーツ・
スピードタイマー
3針自動巻きの61系をベースに垂直クラッチを搭載した世界初の自動巻きクロノグラフ。後年のクロノグラフに大きな影響を与えた。自動巻き(Cal.6139、ムーブメント径27.4mm、厚さ6.5mm)。2万1600振動/時。
垂直クラッチと自動巻きの組み合わせ。これは現在、高級機械式クロノグラフの大きなトレンドになりつつある。ロレックスのキャリバー4130(2000年)、パテック フィリップのキャリバー28-520系(06年)、ピアジェのキャリバー880P(07年)と、その例は枚挙にいとまがない。
これらの「新しい」自動巻きクロノグラフをたどると、あるひとつのムーブメントに行き着く。諏訪精工舎(現セイコーエプソン)が1969年に発表したキャリバー6139である。この61系クロノグラフは効率の良い自動巻き機構と、現在に通じる完成された垂直クラッチを搭載していた。同年発表のゼニス-モバードのキャリバー3019PHC(エル・プリメロ)や、デュボア・デプラが携わったキャリバー11および12(クロノマチック)と比べると、その先進性に驚かされる。
垂直クラッチは、1936年のピアース製キャリバー130にさかのぼる。しかし、天然ゴムを使ったクラッチに難があり(クロノグラフ研究家でもあるクロノスイスのゲルト・リュディガー・ラング氏は高く評価しているが)、普及はしなかった。67年、シチズンもレコードマスタークロノグラフに垂直クラッチを搭載したが、これも主流にはならなかった。今につながる垂直クラッチを完成させたのは、間違いなく69年のキャリバー6139であった。垂直クラッチと自動巻きの組み合わせとしては、もちろん世界初である。
1分間に1回転する4番車に秒クロノグラフ車をつなぐと、クロノグラフが実現する。では、4番車がムーブメントの中心にある場合はどうするか。自動車のクラッチのように垂直につなげばよい。6139が完成させた垂直クラッチとは、4番車が中心にあるセンターセコンドムーブメントを容易に、しかもコンパクトにクロノグラフ化できる、画期的な手法であった。


グランドセイコー
スプリングドライブ クロノグラフ
78万7500円
9R65をベースに生まれた新型クロノグラフ。SS(直径43.5mm、厚さ16.1mm)。自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R86)。GMT、パワーリザーブ表示付き。10気圧防水。7月発売予定。
新しいキャリバー9R86もまた、センターセコンドムーブメントの9R65をベースにしている。しかし、「9R65の設計段階で、クロノグラフの搭載は計画にあった」と設計者の平谷栄一氏(セイコーエプソン)が語るように、そもそもベースの9R65自体が、垂直クラッチ式のクロノグラフを前提に設計されていたのだ。
「スプリングドライブの特徴である高精度を犠牲にしないとすれば、クロノグラフの伝達方式は垂直クラッチしかありません。他の選択肢(例えばスイングピニオンなど)は考えられませんでした」(平谷氏)。
「キネティッククロノグラフのキャリバー9T82(98年)を設計するにあたっても、6139を参考にしました」と平谷氏が説明するように、セイコーエプソンの技術陣は長年、伝説のムーブメント6139と向かい合ってきた。新しいキャリバー9R86とは、そんな彼らにしか生み出し得なかったクロノグラフムーブメントなのだ。自動巻き+垂直クラッチ式クロノグラフの集大成とも言うべきその全貌を、いよいよ次のページ以降で明らかにしよう。
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色は濃紺で、革の表と裏にはグランドセイコーの象徴である「獅子の紋章」があしらわれています。
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