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【ムーブメントから見たクルマ選び】 ポルシェ911ターボ

ポルシェ911ターボ

PORSCHE 911TURBO

体の重心が後方にズレる一瞬。
空気を裂く加速は
まさにフルメタルジャケット。

文:鈴木 明 写真:佐藤靖彦

スタイルを崩さず常に進化に邁進する911シリーズ。その長い歴史にあって”ターボ”は常に別格であったといえよう。可変ジオメトリー式ツインターボで武装された”最新のターボ”は、480psのパワーを捻出するに至った。


エンジンVTG(バリアブル・タービン・ジオメトリー)と呼ばれる可動式のタービンブレードを持つターボチャージャー(ボルグワーナーターボシステム社と開発)を組み合わせた、水冷水平対向6気筒ツインターボ・ユニットの最高出力は、ついに500psに肉薄する480psまで引き上げられた。相変わらずエンジンルームの見た目の演出は、ロゴ入リのプレートがある程度で殺風景だが、その内部にはポルシェのバイザッハ研究所が開発した最先端のテクノロジーで満たされている。また前後駆動力配分の可変制御ができるようになったフルタイム4WD機構を備え、電磁式多板クラッチを用いてトルク配分を前後輪とも0~100%の間(理論上)で切り替え可能になったのもトピックスのひとつ。

最新が最良という不文律

 もちろん工業製品である以上、ニューモデルの性能が優れているのは当然だが、911の場合、スポーツカーのベンチマークとして崇められた自らを越える作業は、決して容易ではなかったはずだ。特にここ20年余りの歩みは、苦悩の連続だったに違いない。


 911伝統のエクステリア、コンパクトなボディサイズ、空冷フラット6ユニット、リヤエンジン&後輪駆動のRRレイアウト、乗り手を選ぶほどのドライビング特性――。独特なスタイルのスポーツカーのイメージは、ポルシェに成功をもたらしたが、ひとつのスタイルにこだわり続けた結果、それまで個性的だった部分にも無理が生じてくる。スポーツカーにとっての生命線であるパワー向上に加え、快適性まで求めるユーザーニーズに応えるには、そのパッケージングや空冷ユニットが、いつしか限界の領域に達し、ポルシェは自ら仕掛けたトラップに嵌まり込んでしまったのである。


 そこでポルシェは第4世代のタイプ993で空冷ユニットと決別し、世代ごとにボディサイズを拡大。困難に立ち向かうための決断を下す。一時的にポルシェ・ファナティックたちから不評を買ったものの、不変のスタイルとイメージは大きく変えず、最新の911は最良のポルシェ、という不文律を守ってきた。


インテリアカレラ・モデルとほとんど変わらないシンプルなインテリア。2000万円近いプライスを掲げるモデルだけに、もう少し演出があってもいい気がするが、ポルシェは昔から過剰なものは一切排除する姿勢を貫いており、ある意味潔ぎ良い。

別格のターボモデル。乗り味は意外にソフト

 第6世代となる最新の911(タイプ997)は、こうした40数年の歴史と技術の積み重ねによって生み出されたわけだが、その中でもターボ・モデルの存在は、別格だ。


 新型の最高出力は、先代から60psアップの480ps。電子制御多板クラッチを採用した新設計の4輪駆動システムと、ポルシェ・トラクション・マネージメントシステム(PTM)でアシストされているといえ、全長×全幅×全高=4450×1852×1300mmのボディサイズのモデルが有するパワーとしては破格の数値である。リッターあたりに換算すると133psを発するが、これはターボチャージャーに採用された新技術が大きく貢献している。流入する排気ガスの容量制御を行う可動式ブレードを設けたこのターボチャージャーは、エンジンからの排出ガスの流れを最適化。特にターボが苦手とされる低回転域で大量の排出ガスを送り込み、その流れをコントロールすることができるため、低速域からフレキシブルで加速性能に優れた特性を得ることができる。


 その恩恵か、最大トルクは、先代から8・2kgmアップの63・3kgmを捻出。発生回転数も1950~5000rpmとかなり広域にセッティングされている。取材車はティプトロニックSと呼ばれる5速ATが組み合わされていたが、確かに480psは強烈極まりない。だが決して扱いにくいわけではなく、乗り味は意外にもソフト。もちろんこれは、ポルシェが意図して味付けしたものだ。


リアビューハイウェイでその本領を発揮してくれるニュー911ターボは、まさに300km/h巡行が可能な真のグランドツアラーである。バリエーションとしては、6速MTと5速ティプトロニック Sのトランスミッションが用意されている。

「周りのクルマが止まって見えるような」感覚さえ抱く

 ニュー911ターボは、明らかに高速グランドツアラーなのである。最高速は310km/hと公表されているが、スロットルを踏み続ければ、何事もなく300km/hに到達してしまうだろう。そして全域で太いトルクを感じながら、ハイウエイを走っていると、周りのクルマが止まって見えるような感覚さえ抱くほどに速い。多少の路面の荒れなどはものともせず、硬すぎず軟らかすぎずで、足まわりのいなし方はいつもながらに絶妙。しかも抜群の安定感だ。


 コンパクトなボディサイズながら、シャシーセッティングで480psを見事に調教しており、さすがポルシェの仕事に抜かりはない。唯一の疑問は、なぜ6速ATを持っているにも関わらず、5速ATなのかという点。70年代の930ターボ時代も長らく4速MT(最終89年モデルのみ5速MT)だけを設定していたポルシェだけに、質問を投げかけても「それが最善だからだ」という答えしか返ってこないだろう。今回の新型は6速MT仕様よりもティプトロSの方が0→100km/h加速でコンマ2秒速く、3・7秒を実現していることを考えれば、性能的には問題ないレベルなのだが、6速AT仕様にも乗ってみたいと思うのは、私だけではないだろう。


 ポルシェ911ターボ。速くて快適な高速グランドツアラーは、まさにコンプレーション・カー(Completion Car)、完成されたクルマと呼ぶに相応しいモデルであった。

スペック

●Engine Spec.
・型式 水平対向6気筒
・総排気量 3600cc
・最高出力 480ps/6000rpm
・最大トルク 63.2kgm/1950-5000rpm
        69.3kgm/2100-4000rpm(オーバーブースト作動時)

●Body Spec.
・ステアリング 左
・全長 4450mm
・全幅 1852mm
・全高 1300mm
・ホイールベース 2350mm
・トレッド前 1490mm
     後 1548mm
・駆動方式 4WD
・ミッション 5速AT(テルプトロニックS)
・車両重量 1620kg
・乗車定員 4名

価格&問い合わせ

車両本体価格=1816万円(MT)1879万円(テルプトロニックS)


※価格は記事掲載時のものです。
問い合わせ=ポルシェカスタマーケアーセンター 0120-846-911
www.porsche.com/japan/

記事掲載号

2006年11月号(No.007) 定期購読申込 バックナンバー常設店

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