【ムーブメントから見たクルマ選び】 LEXUS LS600hL

LEXUS LS600hL
自動車の未来を先取りする
電子デバイスの「ゆりかご」
文:鈴木 明 写真:佐藤靖彦
温暖化による地球環境の悪化にともない、ジドウシャ業界への風当たりが強くなるなか、600h/600hLが新たなベンチマークとなることは、疑いないだろう。

LS600h/LS600hLの心臓部は、LS460が搭載する2UR-FSE型(排気量は4.6・)のストロークを6.5・拡大した5・V型8気筒ガソリンエンジンと、650ボルトの高電圧で駆動される電気モーターのハイブリッド。ガソリンエンジンは燃費向上を図るため、高圧燃料を直接噴射するインジェクターと、吸気ポート内に噴射するインジェクターのD-4Sを採用し、394psの出力を発生する。これに224ps相当のパワーを発揮する電気モーターが組み合わされ、合算で618ps/83.6・mのスペックとなるが、電気式CVTで充電にもエネルギーが用いられるため、実際には445psの最高出力となる。また減速時や制動時には回生ブレーキが働き、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、ニッケル水素バッテリーに充電する。
日本らしい高級感で市場の価値観を変えたレクサスの新型車
高級サルーンといえば、メルセデスやBMWが大きなアドバンテージを有するカテゴリーだ。上質感、快適性、そして性能。どれをとって見ても、他の追随を許さないほど高いクォリティを持つ圧倒的な存在である。しかし1989年、トヨタが北米市場に送りだしたレクサスLS400(日本名セルシオ)が状況を一変させる。この高級サルーンは、日本流のエクスクルーシブを具現化し、メルセデスSクラスやBMW7シリーズの約半分の価格を掲げて登場した。威風堂々とした佇まいに、充実の装備、新しい高級感を演出するLS400は、北米で瞬く間に人気を集め、不動と思われたセグメントを大いに刺激した。
特に室内とエンジンの静粛性はずば抜けており、ライバル各社は徹底的にLS400を研究したという。やがて、その完成度の高さにインスパイアを受けたドイツ勢は、静粛性や装備面、クォリティといったLS400の優れた部分を学び、改善を施してこれに応戦。当然、2代目、3代目へと世代を重ねるごとに進化していくレクサスLSシリーズもマーケットにおける存在感を増し、確固たる地位を確立していたドイツ勢を揺さぶった。
Sクラスや7シリーズを脅かすほどに成長したレクサスLSシリーズは、昨年4代目に移行。日本でもセルシオの名ではなく、2005年秋に立ち上がったレクサス・ブランドのフラッグシップとして、LS460がリリースされている。価格的には700万円台後半から販売されているため、Sクラスや7シリーズと比較すると、まだ安価な設定だが、オプションの選択によっては1200万円を超える。

Sクラスなどのドイツ勢は、エアコンなどの多彩な機能をボタンひとつで操作する集中コントロールシステムを採り、インパネ回りをシンプル化しているが、LSシリーズはコンベンショナルなコントロールシステムを採用。その分、高級感を漂わせる意匠としている。メーター内には、ハイブリッドシステムの出力や回生ブレーキの状況を確認できるインジケーターと、エネルギーモニターが備わる。シートは空調機能を持つパワー機構付き。肉厚で座り心地もソフトだ。
V12ユニットに匹敵する、445psの出力を発生
とはいえ、エンジンバリエーションに限ってみれば、3代目までは1ユニットのみで、Sクラスや7シリーズがV12エンジンまで揃え、豊富なバリエーションを誇るのに対し、選択の余地がないのはマイナス要素だった。せっかく世界を代表するプレステージサルーンとして認知されるまでになったものの、トップクラスの性能の持ち主か、と問われれば、そこには疑問符が残っていたのも事実である。
最新モデルでは、4・6・V8のガソリン仕様に加え、待望の新開発5・V8ハイブリッドユニットを搭載する600h/600hLが設定された。最高出力は394ps、最大トルクは53・0・mを標榜するV8ガソリンエンジンに、224ps/30・6・m相当のパワーを発生する電気モーターを組み合わせ、ライバルに比肩するパフォーマンスを手にしたのである。実際はV8ユニットと電気モーターの組み合わせで、V12ユニットに匹敵する、445psの出力を有しており、それでいて環境性能は3・クラスという地球に優しいシステムだ。
ハイブリッドシステムで対抗するという手法は、ハイブリッド技術で他社をリードするトヨタらしい考えだが「プレステージサルーンの新たな世界観を提案した」、と謳う600h/600hLだけに、実際の走行は、終始これまでに体感したことのないフィーリングである。とにかく単純にアクセルを踏み込んでいけば、パワフル。

600hLに用意される後席セパレートシート・パッケージ。助手席が300・前進移動できるため、リヤシートの足元空間は驚くほど広々している。飛行機のビジネスクラスのように、体を伸ばした状態で着座することが可能だ。リヤシート左側にはオットマンが備えられ、足をゆったりと伸ばせる。またエア圧でコントロールするマッサージ機能は、「リフレッシュ」、「ストレッチ」のコースをリモコンで選択可能。強さや速さまで調整することができる。リヤパッセンジャー専用の大型センターコンソールには、エアコンの操作パネル、シートアレンジメントや電動サンシェードなどのスイッチ類、カップホルダーを装備。リヤシート用エンターテインメントシステムの9インチモニターは、ルーフ部分に格納されている。ドライブ中は音楽だけでなく、TVやDVDなども楽しめる。
電気式無段変速機による淀みない加速
2トンを超える車重をものともせず、ハイブリッドユニット専用にセッティングされた8速電気無断変速トランスミッションを介して淀みなく加速していく。ただし、その際立った静粛性ゆえに“速さ”の体感は希薄だ。さらにアクセルオフすると、エンジンもオフ状態になるため、慣れるまでやや違和感はあるが、これは致し方ないところだろう。
AWDシステムと組み合わせているため、走行時の安定感は高い。ノーマル/スポーツ/コンフォートの3段階で減衰力を変えることができるエアサスペンションを採用しており、一般路ならノーマル、高速路ならスポーツ、そしてドライバーはふわふわ感がやや気になるものの、リヤパッセンジャーがいるならコンフォートがオススメだ。
試乗した600hLは、ホイールベースが標準ボディに比べ、120・長いため、後席の居住スペースは広く、オットマンや指圧機能付きシートまで備えるため、実に快適。プレステージサルーンとして必要とされる資質を十二分に持っている。温暖化による地球環境の悪化にともない、ジドウシャ業界への風当たりが強くなるなか、600h/600hLが新たなベンチマークとなることは、疑いないだろう。
スペック
●Engine Spec.
・型式 V型8気筒DOHC
・総排気量 4968cc
・最高出力 394ps/6400rpm
・最大トルク 53.0kgm/4000rpm
●Motor Spec.
・型式 1KM
・最高出力 224ps
・最大トルク 30.6kgm
●Body Spec.
・ステアリング 右
・全長 5150mm
・全幅 1875mm
・全高 1475mm
・ホイールベース 3090mm
・トレッド前 1615mm
後 1615mm
・駆動方式 4WD
・ミッション 電気式無段変速機
・車両重量 2320kg
価格&問い合わせ
価格:970万~1220万円(LS600h)、1330万~1510万円(LS600hL) ※価格は記事掲載時のものです。
問い合わせ=レクサス インフォメーションデスク Tel.0800-500-5577
記事掲載号
2007年9月号(No.012) 定期購読申込 バックナンバー常設店・掲載されている記事・画像・イラスト・動画などの無断転載を禁止します。
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