【ムーブメントから見たクルマ選び】 アストンマーティン DB9ヴォランテ

ASTON MARTIN DB9 Volante
繊細にして艶やか――
風景を一変させる圧倒的な造形美。
文:鈴木 明 写真:佐藤靖彦
DB9ボランテはアストンマーティンで13台目のオープンモデルとして、2005年夏に日本導入された。台形型のフロントグリルはDBシリーズの伝統的なデザインアイコンであり、コンサバティブながらも曲線と曲面が織り成す美しいフォルムを形成、クラシックとモダンが見事な融合をみせる。
エンジンは、ヴァンキッシュに搭載されている6LV12と変わらないが、DB9はクーペもボランテも同じ450psに出力が抑えられている。プラットフォームは専用開発され、エンジンをフロントアクスルより後方に積んだことに加え、ギヤボックスをデファレンシャルユニットと一体化したことで、理想的といえる前後50:50の重量配分を実現した。そのおかげでフロントヘビーになることなく、旋回性が高まり、強大なパワーがいかんなく走行性能に生かされる。大排気量ユニットらしい凄まじいトルク感は、低回転域から高回転域までフラットに続く。
DB9が巻き起こしたセンセーション
激化するスーパースポーツカーの覇権争い。アストンマーティンは、その戦いを勝ち抜くために2001年、新戦略を打ち出した。そこで掲げられたのが、モデルラインナップの再構築とブランドイメージの転換。自らに高いハードルを課し、セグメントリーダーであるフェラーリに対抗できるモデルの開発に着手。結果、攻撃的なスタイリングと驚異的な運動性能を持つヴァンキッシュを誕生させた。
歴史を遡れば、1987年、アストンマーティンはフォード・グループの傘下に収まったものの、経営的には低空飛行が続いた。92年には販売数が50台以下に落ち、存続さえ危ぶまれたが、93年にリリースしたDB7は、約10年間で7000台の販売を達成。本来、その復活劇は緩やかだったが、ヴァンキッシュの投入により加速度的に権威を取り戻したのである。しかしながら、彼らの新戦略はヴァンキッシュの登場で終結したわけではない。次なるモデル、DB9が巻き起こしたセンセーションは、予想を遥かに越えるものだった。
一見するとDB9のスタイリングは、ヴァンキッシュほどアグレッシブではない。それでもロングノーズ&ショートデッキのコンベンショナルなスタイルに加え、アスリートの鍛えられた筋肉のように隆起したグラマラスなボディフォルムは、先代のDB7よりシャープで洗練された印象を持つ。
DB9ボランテはアストンマーティンで13台目のオープンモデルとして、2005年夏に日本導入された。台形型のフロントグリルはDBシリーズの伝統的なデザインアイコンであり、コンサバティブながらも、曲線と曲面が織り成す美しいフォルムを形成、クラシックとモダンが見事な融合をみせる。
調律された排気音。”みしり”ともしないオープンボディ
そしてDB9のオープンモデルであるボランテは、さらに美しさも兼ね備えた。ソフトトップのインナートリムの完成度が高められ、クーペ状態でも、コクピットに座っている分にはオープンモデルであることを感じさせない。もちろん、チューニングされた重厚な排気音の高鳴りをダイレクトに堪能できるのは、ボランテだけの特権だ。
先代からブラッシュアップした部分は枚挙に暇がないが、エンジニアリング面の充実が目を引く。特に新開発のシャシーは、アストンマーティンのDB9へ賭ける並々ならぬ意気込みが伝わってくる部分だ。VHプラットフォームと呼ばれる、アルミニウムパネルを接着もしくはリベット止めで接合する最新のスペースフレーム技術(航空宇宙分野)を採用したシャシーは、軽量でありながら、強靱さを兼ね備える。路面からのキックバックは、タイヤからアルミサスペンション、アルミシャシーへと伝達されるが、溶接工法により理想的なストレス配分が可能なため、その力を見事に吸収するという。
確かにそれは実感できる。オープンモデルのボランテでありながら、オーバースピードでタイトコーナーへ突っ込んでいっても、ボディは“みしり”ともしない。明らかに450 psのエンジンパワーにシャシーが優っている。また、フロントに重いV12ユニットを積んでいるが、重量配分はほぼ50:50に保っておりシャシーにかかる力を高レベルでバランスさせている。これは、ギヤボックスをデファレンシャルと一体化(トランスアクスル方式)し、リヤセクションに搭載したことによる恩恵だ。
DB9ボランテはアストンマーティンで13台目のオープンモデルとして、2005年夏に日本導入された。台形型のフロントグリルはDBシリーズの伝統的なデザインアイコンであり、コンサバティブながらも、曲線と曲面が織り成す美しいフォルムを形成、クラシックとモダンが見事な融合をみせる。
手作業で組み上げられた“特別な1台”という価値観
パワーユニットも秀逸。ヴァンキッシュのエンジンをベースに、クランクシャフト、カムシャフト、吸排気マニホールド、エンジンマネージメントシステムなどを一新。最高出力こそヴァンキッシュには劣るが、ラフにスロットルを開けようものなら、圧倒的なパワーに翻弄されてしまうほどである。
6Lの大排気量自然吸気ユニットらしく低回転域から溢れ出るトルク感は、通常の6速オートマチックトランスミッションを介してトップエンドまで衰えることなく発揮され、怒濤の推進力に変換される。セレクターレバーがコンソールに存在せず、センターパネルに丸いスイッチで配置されているのもトピックで、マグネシウム素材のステアリングコラムに設けられたパドルシフトはD(ドライブ)モードのみで有効。操作フィールは変速ショックがほとんどなく、シフトダウン時にエンジン回転を自動的にブリッピングする機能を備え、スポーツドライビングに適応したセッティングだ。
DB9ボランテはまさしく妖艶なスタイリングの中に、先進のテクノロジーを凝縮させたオープンスポーツ。ほとんどハンドメイドで生産されることを鑑みれば、フェラーリにはないエクスクルーシブさを秘めた、貴重な存在なのである。
スペック
●Engine Spec.
・型式 V12DOHC48バルブ
・総排気量 5935cc
・最高出力 450ps/5750rpm
・最大トルク 58.1kgm/5000
●Body Spec.
・ステアリング 右/左
・全長 4710mm
・全幅 1875mm
・全高 1270mm
・ホイールベース 2600mm
・トレッド前 1570mm
後 1560mm
・駆動方式 FR
・ミッション 6速MT/6速タッチトロニックAT
・車両重量 1800kg(AT)
・乗車定員 4名
価格&問い合わせ
車両本体価格=1976万1000円(MT)2028万6000円(タッチトロニック) ※価格は記事掲載時のものです。
問い合わせ=アトランティックカーズ 03-3583-8611、アストンマーティン赤坂 03-5411-2332、アストンマーティン大阪八光 072-725-0808、アストンマーティン名古屋 0568-86-4070
http://www.astonmartin.co.jp
記事掲載号
2006年3月号(No.003) 定期購読申込 バックナンバー常設店・掲載されている記事・画像・イラスト・動画などの無断転載を禁止します。
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