【ムーブメントから見たクルマ選び】 ジャガー XK

JAGUAR XK
軽やかに走り抜ける
英国紳士
文:鈴木 明 写真:佐藤靖彦
独特な乗り味と英国らしい洗練された雰囲気。XJサルーン同様にアルミモノコックボディが与えられたXKクーペは、伝説の”Eタイプ”に通じるリフトバックスタイルで登場した。

ジャガーXKは、1996年に開発されたお馴染みのAJ-V8ユニットの進化版を搭載している。先代のXK8から大きくスペックは変わっていないが、4196ccの排気量から、304psの最高出力と、43.0kgmの最大トルクを発生する。このAJ-V8エンジンは、フォード・グループ内の各ブランドで流用されており、エンジン形式名はそれぞれ異なるが、リンカーンやランドローバー、さらに排気量が4.3Lにスープアップされているものの、アストンマーティンのV8ヴァンテージに搭載されているユニットも、ベースは同じものとなる。パフォーマンスに定評のあるV8エンジンとして知られている。スーパーチャージャーを組み合わせることで、426psというハイパワーを実現したXKRも日本に上陸ずみである。
ビューティー・ファースト・カー
ジャガーに乗ること。もはやそれは特別なことではないのかもしれない。
2001年ジュネーブショー。メルセデスのCクラス、BMWの3シリーズなどが属する熾烈を極めるセグメントに向けて、ジャガーはXタイプでの参入を表明した。高嶺の花だったジャガーが、より身近な存在になった瞬間だ。なにしろ400万円以下で買えるモデルが加わったのだから……。
しかし日常における利便性や、その総合力でドイツ勢に一日の長があるのは明白だった。ただ単にクルマという商品として、新参者が強力なライバルたちに対抗する術を身につけるのは容易なことではない。フォード・グループの一員として、成長を課せられるなか、企業として新たな分野を開拓するのは当然の流れであり、敢えて激しい競争を強いられるクラスに挑むジャガーの並々ならぬ意欲と、新たな方向性の模索からXタイプは生まれたが、まずクルマの出来映えを語る以前に、相手があまりに強すぎたのである。
それでも、今回フィーチャーしたXKシリーズともなると、話が違ってくる。ジャガー・スポーツの伝統を受け継ぐ性能とボディフォルム、さらに優美なインテリア。″ビューティー・ファースト・カー〝というブランドフィロソフィーを具現化したXKシリーズは、ライバルを寄せつけないというよりも、独創的な世界観を構築する、ライバルのいないモデルといっても過言ではあるまい。

エンジンは、スタータースイッチを押して始動させる。キーエントリーはなく、スマートキーを室内に持ち込み、スイッチをオンするだけで4.2LV8が目覚める。質実剛健なドイツ車とは異なり、英国らしい優美さと上質さを持ち合せている。
伝統のなかに垣間見える革新
伝統のなかに垣間見える革新。XKシリーズを言い表すなら、そういうキャッチコピーがもっとも適しているかもしれない。1960年代に登場し、いまでも語り継がれる名車、Eタイプに通じるハッチゲートを持つリフトバックスタイルのボディは、アルミニウムモノコックで成型されている。剛性感のあるシャシーは、クラス最軽量を誇り、それでいてしなやかな身のこなしを見せつける。その乗り味は、ある種独特。塊感のあるボディのなかにいることを意識させながらも、硬さは感じさせず、実にラグジュアリー。猫足と評されるジャガーの足まわりは、XKでも健在だ。上下方向の激しい突き上げをも、見事に収束させてしまう懐の深さを持ちあわせている。
タウンスピードで走っている分には、コンフォートきわまりないXKだが、ひとたびスロットルを開ければ、実にスポーティな反応を示してくれる。4・2LV8エンジンはすぐさま呼応し、滑らかにトルクが発せられ、力強さを増してゆく。まさに使える304psだ。どこからでも加速できる扱いやすさも秀逸である。またL字型ゲートのギヤシフトは、ZF社製の6速トランスミッションを採用するが、ステアリングホイールに取り付けられたパドルシフトを有するため、素早いダウン&アップシフトが可能。意のままに操ることができ、変速することで変化するエキゾーストサウンド(サイレンサーに流入するガス量を変え、サウンドチューニングされている)も、さらなる興奮を掻き立ててくれる。
マッシブなサイドフォルムから、リヤエンドに向かってボディ自体を絞り込むことで、安定感があり、スポーティかつ動きのあるデザインを具現化した。
スポーツラグジュアリーの醍醐味
性能に加え、それを演出するスポーツカー的な側面も印象的だ。剛性感を生み出しているアルミシャシーと、新設計のサスペンションによるシャシーチューニングが巧みで、十分なパワーを感じさせながらも、ドライブフィールはラグジュアリーという、ジャガーならではの味付けがなされている。そのためハンドリングが独特で、やや慣れを要する部分はあるが、時間の経過とともに、スポーツラグジュアリーの醍醐味に触れ、それが病み付きになってくるから不思議だ。
そして忘れてならないのは、その気品と優雅さの象徴ともいえるインテリア。仕様によって異なるが、ウッド系2種、もしくはアルミニウムの合計3種類のパネルが設定されており、室内のトリムは上質なレザーで覆われている。ベントレーやロールロイスにも通じる英国生まれらしい、伝統に裏打ちされた、贅を尽した空間がそこにはある。これだけでもXKを所有したいと思わせるクオリティであろう。
Xタイプの投入により一般的なイメージを構築したジャガーではあるが、XKはジャガーならではのスぺシャリティに溢れ、伝統と革新が見事に融合されていた。最新テクノロジーと英国車“らしさ”を巧みにパッケージングしたモデルであった。
スペック
●Engine Spec.
・型式 V型8気筒DOHC
・総排気量 4196cc
・最高出力 304ps/6000rpm
・最大トルク 42.9kg/4100rpm
●Body Spec.
・ステアリング 右/左
・全長 4790㎜
・全幅 1895㎜
・全高 1320㎜
・ホイールベース 2750㎜
・トレッド前 1560㎜
後 1600㎜
・駆動方式 FR
・ミッション 6速AT
・車両重量 1690kg
*数値はクーペ
価格&問い合わせ
車両本体価格=1130万円~(クーペ)1230万円~(コンバーチブル)
※価格は記事掲載時のものです。
問い合わせ=ジャガージャパン 0120-050-689
www.jaguar.co.jp
記事掲載号
2007年5月号(No.010) 定期購読申込 バックナンバー常設店・掲載されている記事・画像・イラスト・動画などの無断転載を禁止します。
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