【ムーブメントから見たクルマ選び】 アウディ S6
AUDI S6
弩級重量のボディを加速させる
あまりに暴力的なパワー感。
文:鈴木 明 写真:佐藤靖彦
アイドリング直後から、湧き出すような圧倒的パワー感。ランボルギーニ・ガヤルド用をベースに、サルーン向けに仕様変更された435psのV10エンジンを搭載する。
S6がフロントに搭載しているV10エンジンは、アウディ傘下のアウトモビリ・ランボルギーニ社がラインナップするガヤルドのユニットをベースに開発したもの。とはいえボア、ストロークが異なり、ガヤルドの4961ccに対し、このV10の排気量は5204ccである。最高出力の数値的には、520psのガヤルドから85psも抑えた435psとなるが、逆に最大トルクはガヤルドの52.0kgmよりも高く、55.1kgm(3000rpm~4000rpmで発生)という設定となっている。特に注目すべきは、そのトルク特性であり、2500rpmから5000rpmという常用域で最大トルクの90%を発揮し続けるセッティングになっている。ピークパワーを重視するよりも、扱いやすく、俊敏な運動性能を追求している。
衝撃的な”ランボ用V10”の搭載
V10を搭載するアウディS6。クルマはスペックだけで判断するものではないことは、十分理解しているつもりだが、ミディアムクラスのセダンとステーションワゴンに、10気筒のエンジンを積むという事実。アウディのスポーツモデルの証である“S”のネーミングを与えられたS6の登場は、まさに衝撃的であった。S6の下にポジショニングされるS4に、V8ユニットを与えていることから、ヒエラルキー的にも、V10ユニットを採用せざるを得ない事情があったのかもしれないが、やはりこのV10エンジンの搭載が、S6の大きなニュースだ。
もちろんエキゾチックなスタイリングと、エキサイティングな性能を与えられたスーパースポーツカーや、贅の限りを尽したハイエンドセダンの世界ならば、V10どころかV12(ブガッティ・ベイロンにいたってはW型の16気筒)が常識化しているものの、これがA6ベースのモデルとなれば、尋常なハナシではなくなってくる。
最高出力は435ps、最大トルクは55・1kgm。この数値は、500psでさえ当たり前になってきた現状からすれば驚くほどではないかもしれないが、スロットルを開けた瞬間、V10はなんの躊躇いもなく、いきなり本領を発揮し始める。エンジンに火を入れた際の、意外にもジェントルなサウンドから想像した性能とは、まったく異なる世界が一瞬にして解き放たれるのだ。
デザイン自体はベースとなるA6に準ずるが、エンブレム入りの本革3スポークステアリングホイール、アルミルックのパネルとレザーを組み合わせたセレクターレバー、カーボンファイバーで成形されたセンターコンソールなど、S6専用の演出が施されている。トランスミッションはトルクコンバーター式の電子制御6速ATだが、ステアリングホイールにはパドルシフトが設けられており、スポーツドライビングに対応。
通常時で40対60。リア寄りのトルク配分
5・2Lという大排気量の自然吸気ユニットらしく、トルクの出方は実にスムーズで、大袈裟ではなく、アイドリング状態というか、1000rpmからパワーが炸裂する。しかもフルスロットルすれば、5000rpm付近までとめどなくトルクが溢れ出てくるのである。これだけのパワーフィールをターボなどでドーピングすることなく発するのだから、その威力は凄まじい限り。この魅力的なV10ユニットだけで判断しても、S6を買う価値と理由がある。
それでいてS6が優れているのは、その走行安定性だ。全開で加速状態に入っても、アウディ伝統のクワトロ4WDにより、危うい挙動など微塵も見えない。通常時で40対60、路面コンディションによっては、最大でフロントに65%、リヤに85%のトルクを配分する電子制御システムであるため、横滑りしたりすることなく、常に高いスタビリティが得られるのだ。もし一輪だけスリップしたとしても、エレクトリック・デファレンシャル・ロック(EDL)が作動し、自動的にブレーキを制御するため、雨でも雪でも心強い。だから安心してハイウエイクルージングできるし、実際にタイヤが路面を捉える感覚がステアリングから伝わってくる。
全長4915mm×全幅1865mm×全高1435mmという、威風堂々たる車格。19インチホイールを履くため、フロントフェンダーはA6より14mmもワイドフレアになっている。
スポーツラグジュアリーの醍醐味
ブレーキシステムは、流行りのカーボンセラミックディスクこそ設定していないが、制動力がパワーを下回ることはない。サーキット走行では、カーボンセラミック製のシステムが欲しくなると思うが、スチール製でもフロント385mm、リヤ335mmという大径ディスクローターを標準で備えるため、公道の範疇では十分満足できるストッピングパワーを有している。ただしそのブレーキシステムを収める、19インチサイズのタイヤ&ホイールは、少しばかりS6にネガティブな要素を与えているようだ。
単にタイヤ&ホイールに問題があるのではなく、サスペンションがそれを支え切れていないのか、完全にコントロールできていないように思える。要するにサスペンションの突き上げが気になるのだ。アンジュレーションの続くところでは、路面からの入力が伝わってきて、収束しきれていない。ホイールのサイズダウンをしてバネ下重量を軽減すれば解消しそうだが、そうすると今度は435ps/55・1kgmから発せられるトラクションを受け止めることができなくなるというジレンマが生じてくるが、唯一気になる部分だけに惜しまれるところだ。
V10エンジンの搭載をはじめ、S6はハイパフォーマンスモデルだけに、独自のスタイリング(専用スポイラーなど)が与えられるなど、そのスポーツ性能ばかり注目してしまうが、プレミアムを尊重するアウディらしく、ラグジュアリーな面も併せ持っている。タウンスピードで走っている分には、快適で優雅な乗り味に終始するし、本革製のステアリングやシフトノブ、カーボンファイバーのパネルで構成させる室内には、S6ならではの特別な演出もされている。
総合力として、バランスの高さを実感した次第だが、やはり“S”の称号は伊達ではないと感じる。
スペック
●Engine Spec.
・型式 V型10気筒DOHC
・総排気量 5204cc
・最高出力 435ps/6800rpm
・最大トルク 55.1kg/3000-4000rpm
●Body Spec.
・ステアリング 右/左
・全長 4915㎜
・全幅 1865㎜
・全高 1435㎜
・ホイールベース 2847㎜
・トレッド前 1596㎜
・後 1576㎜
・駆動方式 4WD
・ミッション 6AT(ティプトロニック)
・車両重量 1910kg
価格&問い合わせ
車両本体価格=1258万円(セダン)1284万円(アバント)
※価格は記事掲載時のものです。
問い合わせ=アウディ ジャパン 0120-598-106
www.audi.co.jp
記事掲載号
2007年03月号(No.009) 定期購読申込 バックナンバー常設店・掲載されている記事・画像・イラスト・動画などの無断転載を禁止します。
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