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Chronos日本版

【ムーブメントから見たクルマ選び】 フェラーリ 599

FERRARI 599

FERRARI 599

世界を魅了する
スーパースポーツの旗艦車

文:鈴木 明 写真:佐藤靖彦

魅惑的なエンジン、操る者の意図を的確に伝えるミッション、路面を服従させる足回り。普遍を嫌い、トップセグメントのみを目指す完成されたクルマは、まるで複雑時計のような独自の哲学と美意識に溢れている。


エンジンエンツォ・フェラーリのV12ユニットであるF140B型をベースに、フロントミッドシップの599に合わせて改良を施したF140C型を搭載する。具体的には、クランクシャフトやカムシャフトなどが専用パーツに改められ、吸排気システムのレイアウトも変更。モデルレンジのヒエラルキーが考慮されていることもあって、エンジン出力は、エンツォ・フェラーリよりデチューンされた620psを計上する。しかしエンジン回転数は200rpm高められ、599独自のチューニングが施されているのだ。さらにこのV12ユニットは、先代の575Mマラネロのそれと比較して19kgも軽量化されており、加えて20・も重心高が下げられている。パワースペックだけでなく、走行性能を飛躍的に高めるための取り組みが徹底的に行われている。

ルカ・ディ・モンテゼモーロの功績

 1950年にF1が開催されて以来、シャシーとエンジンを開発するフルコンストラクターとして戦い続けてきたフェラーリ。これまでチームとして14度のコンストラクターズタイトルを獲得、通算200勝という記録(2007年第3戦のバーレーンGPで194勝)への到達も見えてきた、偉大なる存在である。

 創始者エンツォ・フェラーリはレースに魅せられ、スクーデリア・フェラーリ・チームを第2次大戦前に結成し、その歴史をスタートさせた。レース資金を得るために、戦後まもなくの47年、ロードカーの生産を始めたというのは有名な話だが、F1をはじめ、世界最高峰の戦いの場で得たノウハウと高い技術力によって開発された市販車は、多くの人々を虜にするには十分な性能を持っていた。

 あくまでエンツォ・フェラーリにとって、レースがファーストプライオリティであり、ロードカーの生産は二の次だったのかもしれないが、彼の亡き後、ルカ・ディ・モンテゼモーロが91年に社長へと就任してからは、ドラスティックな改革が敢行された。V8モデルのF355で、2ペダルのパドルシフト付きF1マチックを採用したのを皮切りに、F1マシンの最新テクノロジーを市販モデルに投入。

 71年にスクーデリア・フェラーリ・チームのマネージャーを務め、F1の世界を知り尽くしていたモンテゼモーロは、より具体的にF1マシンと市販モデルを直結させ、そのイメージと製品クォリティを高める方策を講じた。それはモデルを追うごとに進められ、90年代初頭、不振に喘いでいたF1チーム再建との相乗効果もあり、フェラーリは企業として飛躍的に成長を遂げた。


ダッシュボードカーボンファイバーパネルと上質なレザーのコンビネーションで、世界最高峰のグランドツーリングカーらしくスポーティかつラグジュアリーな演出がなされている。F355以降、採用されてきた2ペダル式のF1マチックは、599で「F1スーパーファースト」という最新のシステムに進化を遂げた。下:シートは、カーボンファイバーのシェルを持つスポーツタイプ。電動調整式で身体をしっかりとサポートしてくれる。長時間のドライブでも意外に快適だ。

F1で培った技術を惜しみなく投入

 まさにルカ・ディ・モンテゼモーロの功績は計り知れないが、その集大成ともいえるのが、最新の599なのである。創始者の名を与えたエンツォ・フェラーリやV8のF430には、戦いの場で培われたF1テクノロジーが数多く盛り込まれている。そのパフォーマンスは驚愕そのものであり、スーパースポーツの新たな方向性を主張するものだ。しかし599はさらなる衝撃をもって登場した。

 ボディデザインは、これまでどおりピニンファリーナのクリエイト。一番の特徴はトップアスリートの鍛え上げられた肉体を彷佛とさせる、絞り込まれたフォルムだろう。ピンナと呼ばれる、空力効果をもたせたエアインテークのような造形のCピラーを採用し、そのスポーツ性能を体現している。ボディサイズ的には2+2レイアウトの612スカリエッティより200mm短いホイールベースとし、ここに重量の85%を収めてスポーティさを追求しているのだ。

 クルマの運動性能に関わる基本的なパッケージングを再考し、F1テクノロジーを巧みにマッチングさせた599だが、そのひとつであるF1マチックの進化版、F1スーパーファーストの変速スピードは驚異的だ。レースモードを選択すれば(もしくはスポーツモードの5000rpm以上&80%のパワー出力発生時でも)、変速は0・1秒で完了する。しかも変速時は、ショックを感じさせず、それでいてスムーズ。
 
0911f5993.jpg2+2シートの612スカリエッティと比較すると全長は200・も短く、極限まで高めた運動性能を付与された599。車格のわりに車重は1750kgしかない。

エンツォとは別の味付けを施したF140C型を搭載

 エンツォ譲りのV12エンジンが発する620psのパワーに耐え得るシステムを構築した技術力もさることながら、パワー落ちもなくダイレクトに路面に伝えてくれる。相変わらずコーナー手前でのダウンシフトも実に快感だ。極端なことを言えば、ドライバーはブレーキとステアリング操作に集中すればいいだけで、あとはシステム任せでコーナーをクリアできるのだ。

 それだけではない。F1トラックと名付けられた新トラクションシステムが採用され、全開加速時には、従来比で40%アップの駆動力がリヤタイヤに与えられる。安全で、しかもスタビリティが高く、ドライバーの意志と状況にあわせ、適確なトラクションが供給されるのだ。

 また、磁気粘性流体を用いた減衰力可変ダンパーのサスペンションが、きめ細かな制御をしてくれる。これは、ダンパー内のオイルに鉄粒子を入れ、通電により粘度を変化させるという画期的な技術。620psと聞くと、思わずアクセルを踏むことを躊躇してしまいそうだが、ドライバーの力量を問わず許容してくれる足まわりに仕上がっているのだ。

 そして、これらの最新デバイスを統合制御し、クルマの挙動を路面コンディションに合わせて適応させるのがマネッティーノ(ステアリング上にモード選択スイッチを装備)だ。まさにF1テクノロジーが、599を究極の領域に到達させ、フェラーリ躍進の証といえるモデルを誕生させたのである。

スペック

●Engine Spec.
・型式 V型12気筒DOHC
・総排気量 5998cc
・最高出力 620ps/7600rpm
・最大トルク 60.0kgm/5250rpm

●Body Spec.
・ステアリング 右/左
・全長 4685mm
・全幅 1965mm
・全高 1325mm
・ホイールベース 2750mm
・トレッド前 1690mm
     後 1618mm
・駆動方式 FR
・ミッション 6速F1マチック
・車両重量 1750kg

価格&問い合わせ

価格:3045万円
※価格は記事掲載時のものです。

問い合わせ=コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド Tel.03-5730-1655

記事掲載号

2007年7月号(No.011) 定期購読申込 バックナンバー常設店

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